『神坂雪佳―琳派の継承・近代デザインの先駆者』展
神内有理 

『神坂雪佳―琳派の継承・近代デザインの先駆者』展
二〇〇三年八月三〇日(土)〜一〇月三〇日(木)
京都国立近代美術館(巡回)

近代日本美術史を再考するのに、雪佳は好適人物である。いわゆる絵画・工芸両分野にわたって展開される彼の活動は、固定化されたジャンルの枠組みでは捉えきれないからだ。
展示には、当時の京都の産業や芸術がおかれていた雰囲気を盛り込んで貰いたかったが、それは豪華な図録で補うことが出来る。そこに掲載された論文は、詳しく、丁寧で示唆に富んだ内容であった。ただ、雪佳がテーマであるとは言え、琳派評価に対する再考がないことが気に掛かる。他者からの輸入の産物である、琳派に代表されるような日本的なイメージに自己満足を覚えるといった、歴史的起源を忘れた琳派礼賛は、思考停止の立場に立つことを容認する思想に他ならず、結果制作は貧困化してしまう。それは、雪佳の意図、そして努力とはまるで反対の姿勢ではないかと思うのだけれど。