トーマス・シュトゥルート マイ・ポートレイト
 2000年12月19日(火)〜2001年2月4日(日) 京都国立近代美術館(京都市左京区)
三輪聡子 
((本学講師))

トーマス・シュトゥルートは、思想や感情の私的な表現、人為的、作為的な要素を最小限に抑制し、対象そのものについての透明で客観的なヴィジョンを得ようとするベッヒャー派の手法に学んだ写真家である。「マイ・ポートレイト」展は、近年始められた自然をテーマにした<パラダイス>と題されるシリーズを含み、この写真家の新しい側面を見せている。複数の都市で撮影された、街路や住宅、20世紀建築群、家族の肖像。渋谷の交差点の風景と、屋久島の樹林。<美術館>のシリーズの美術品を見る人々のすがた。対象をあるがままに捉えようとするドキュメンタリーの手法に限りなく近づいていくかのような、人間と世界の探究に向かう或る透徹した視線を感じさせるこれらの写真は、驚くほど饒舌に詩的に、見るものに対して多くのことを問いかけ、語りかけてくる。