狩野派に学ぶのをやめ、宋元画の模写にも飽き足らず、伊藤若冲はただひたすらに眼前の事物を観察しはじめる。事物のうちにひそんで霊妙なはたらきをつかさどる「神気」なるものを捉えることができれば、筆はおのずと動き出すと考え、対象を自分の目で直に見て描くことに没入してゆく。そこでは浅薄な写実性や遠近感は問題にされず、さまざまな新しい手法が試される。気をはらんだ動植物群の痙攣的なうねり、画面からあふれ出る形象の反復の音楽は、没後二〇〇年の今日も眩暈をおぼえさせる。会期中、講座やシンポジウムなどの催しもありますので、詳しくは京都国立博物館ホームページ(www.kyohaku.go.jp)を参照してください。会期中陳列替えあり。
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