アンコール・ワット拓本展
 2000年4月25日(火)〜5月14日(日)京都精華大学ギャラリーフロール
三輪聡子 
((本学講師))

対象を何らかのかたちで記録したいと思う場合に、その手段のひとつとして拓本がある。これらの拓本群は、まるで繊細なデッサンや銅版画のように、自律的で、精緻で圧倒的なモノトーンの世界をみせている。
遺跡はポル・ポト政権の影響下で20年ものあいだ放置され、その間に盗掘や自然の猛威によって破壊が進んだ。記録映像のなかの、短期間で成長し遺跡を破壊する熱帯性の植物は、遺跡と同根の、苛烈な自然環境のなかで生を享けたものの激しい美しさをもっている。現在の遺跡のすがたを記録するための、人文・美術の両面における喫緊の事業でもある。