美術の中のかたち 手で見る造形展
 2000年7月1日(土)〜9月17日(日)兵庫県立近代美術館 (神戸市灘区)
三輪聡子 
((本学講師))

手をふれてみたい、という気持ちにさせられる美術品は少なくない。とくに彫刻。今年で11回目をむかえるこの展示企画では、オーギュスト・ロダンやアルベルト・ジャコメッティのあの表面を、「目でさわる」のみならず「手で見る」ことができる。三人の現役の作家、マスダマキコ、松井智惠、山口さとこの出品した作品は、展示空間のなかに動きをもって広がり、素材そのものの触覚の新鮮さに加えて、音やにおい、かたちの変化、表面温度、光と影の効果、体感型・参加型の要素などをとり入れている。館蔵品からの出品はほかに、レイモン・デュシャン=ヴィヨン、オシップ・ザッキン(いずれもブロンズ)。この企画は元来視覚障害者が美術作品に接することを主要な目的として始められたが、視覚優位の美術の世界を問い直すという目的も含んでいる。「目で見る」ことは、対象とのあいだに、ある距離をもつことでもある。通常美術館の作品とのあいだに存在しているある距離感をこえて、作品にじかにふれ、作品を知ることができる。東京都渋谷区松濤のギャラリーTOMも、視覚障害者が安心して自由に美術と対話できる場をつくるという、同様の主旨に基づく企画を展開している。