両世界大戦間の混乱期のドイツでは、第一次大戦前の表現主義の抽象的な傾向にたいし、時代や社会により現実的に関わろうとする、ノイエ・ザッハリッヒカイト(新即物主義)の運動が展開されてゆく。自らも従軍したジョージ・グロスは、ベルリンのダダイズム、形而上派、シュルレアリスムなどの影響をうけながら、社会の矛盾、退廃、混沌のなかに生きる人間たちを描いた。反政府的な内容のために裁判ざたに巻き込まれながらも、同志的な間柄だったマリク(ヘブライ語melech[王、指導者、首領]に対応することば)出版社に支えられ、その活動は国際的に伝播してゆく。ベルリン時代と、ナチス政権下に亡命したニューヨーク時代の、作風の変化も見ることができる。
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