映画紹介
関口裕一 

◆『スネーキーモンキー蛇拳 蛇形刀手 Snakein The Eagle‘s Shadow』
 1978年 袁和平(ユエン・ウーピン)監督
 マイケル・ホイは、地域が求めた俳優であったが、ジャッキーはブルース・リー亡き後の時代が求めた俳優であった。彼が登場したという事実自体が、香港映画界の窮地を救うことになった。何より大きかったことは、彼がブルースのように急死しなかったことである。
 現在でも第一線で活躍する彼の存在は、誰もが認めるところであり、香港映画の代名詞としてこれからもがんばってもらわなければならない状況を築いた出発点が本作である。

◆『悪漢探偵 最佳拍●(木辺に當) Aces Go Places』
 1982年 曾志偉(エリック・ツァン)監督
 香港映画の歴代興収一位を誇るのが本作である。たが、日本人が全てを理解して楽しむことは(つまりは香港人と同じ感覚で楽しむことは)非常に難しい。香港映画の特徴の一つなのだが、自分たちが楽しめれば満足(当然、植民地であったという事実が関連しているのだが)というものがあるのだが、本作もその部類に入るものである。だが、我々が観て、全く面白くないかといえばそうでもないところが香港映画の懐の深いところでもある。

F『プロジェクトA A計劃 Project A』 1983年 成龍(ジャッキー・チェン)監督
 私個人の香港映画ベスト3に入る作品である。また、全てのアクション映画ベスト5に入る傑作であるとも考えている。本作は香港人の、香港人による、香港人のための映画を体現した作品であると断言できる。また、彼が俳優だけでなく、監督としても優れているという証の作品であるとも言えるであろう。
 別の観点で見ると、彼の活動はいかに本作を超えるかに集約される。彼のサービス精神は、その課題への解の一つであると感じられる。

◆『風の輝く朝に 等待黎明 Hong Kong 1941』 1984年 梁普智(レオン・ポーチ)監督
 反日映画は山ほどあるが、本作ほどの作品には中々お目に掛かれない。極めて単純なメロドラマなのだが、「香港陥落」という歴史的事実によってそのメロドラマは唯一無二の存在へと転化される。70年代の終盤に始まった「ニューウェーブ」は、本作によって一応の終末を見たと私は考えている。
 日本人であることがこれほど「悔しく」なる映画は、本作をおいて他には無い。そこには善悪二元論では片付かないメロドラマが広がっている。