L『七小福/七小福/Painted Faces』 1991年 羅啓鋭(アレックス・ロー)監督 ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウといった香港映画を支える人々の少年時代を描いた佳作である。京劇の養成学校を舞台とし、虐待のような訓練がまかり通っていた60年代の香港は、舞台の数が減り映画産業が飛躍的に伸び始めた時代でもあった。少年たちは歯を食いしばりながら修行に耐え、スタントマンとして師の許を巣立っていった。 香港映画をある程度本数を見て本作を見ると、八割方は泣ける映画である。
M『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱 黄飛鴻男児当自強/ Once Upon A Time In China』1992年 徐克(ツイ・ハーク)監督 香港人のヒーローとは『ドラゴン怒りの鉄拳』の陳眞の師霍元甲と、黄飛鴻である。特に黄飛鴻は広東人であり香港にも来た(居た)とされ、その人気は極めて高い。更に戦後すぐの1949年には黄飛鴻を主人公とした映画が公開され、70年代までに99本(諸説あり)のシリーズが作られたと言われている。 本作はいわばそれらのリメークだが、香港返還を控えたこの時期、国を憂いる者を主人公にしたのは監督の慧眼であったといえる。
N『つきせぬ想い/新不了情/C’est la vie, mon cheri』1993年 爾冬陞(イー・トンシン)監督 90年代最高のメロドラマである。結末も分かっているし、「泣け」と言って琴線に触れられるのも全て承知の上での作劇なのである。だが、人はそのような物にこそ弱いのである。ノースターでしかも低予算の本作は「メロドラマ」を武器に年間6位のヒットを飛ばすことになる。 この映画以降、香港での映画の作り方が変わってきた。制作費を大きく注ぎ込むものと、限られた予算で試行錯誤するもの。これは今でも続いている流れである。
O『恋する惑星/重慶森林/Chungking Express』1994年 王家衛(ウォン・カーウァイ)監督 映画界の流れを変える作品は多い。本作はビジュアルにおいて流れを変えることとなった。また、もう一つ特記しなければならないこともある。それは本作が、恐らく日本において初めて「ファッション」として需要されたということである。本作は、日本における香港映画のあり方を変えた作品であると言っても過言ではあるまい。 この監督の前作『欲望の翼』を評価する向きも多いが、私は影響等を考えると本作を評価してしまうのである。 (せきぐち・ゆういち 本学修士課程修了生)
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