原題は Le Japon eternel すなわち「永遠の日本」であるが、山折教授によると、ドゥレ氏は日本美術研究者とのことである。ガリマール社の「再発見」シリーズは、珍しい図版を豊富に含むことで知られているが、本書も例外ではない。本文が遠慮がちにさえ見えるほど多様多彩な体裁になっており、日本美術に疎くはないはずのフランスの読者も、さぞ目を奪われることだろう。勿論、日本人にとっても刺激的な案内になっている。 本書が興味深いのはそればかりではない。これは単に日本文化紹介の書物であるというだけでなく、外国での日本文化受容の例としても非常に考えさせられる点を持っている。たとえば、狩野派について述べた部分がすべて足しても10行程度であること、それに対して、浮世絵については全体の1割以上を充てていることなど、日本美術史へのフランス人ならではの視点が如実にあらわれている。今やフランス人が浮世絵しか知らないわけではない。それでも、狩野派のアカデミズムより、北斎のアクロバティックな技術の方が、近代絵画史観には受けが良いということだろう。 読むうちに所々に引っかかりが生じ、疑問が沸き、気がつくと「日本の歴史」のハンドブックを読んでいるのではなく、日本文化のありかたについて考えさせられている。そのつもりで著者と対話していただきたい。
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