F.ルイジーニ『女性の美と徳について』
 岡田温司+水野千依編訳 ありな書房 2000年
上村博 

本書は「ルネサンスの女性論」シリーズの3冊目である。既刊はピッコロミーニ『女性の良き作法について』、フィオレンツォーラ『女性の美しさについて』であり、女性像についてルネサンス期に交わされた議論が直かに日本語で読めるのは幸運である。本書は著者ルイジーニが夢の中でとある別荘におもむき、貴顕淑女と会話して三日間すごす、という設定をとっている。そして男性たちが各々自分の意中の女性を褒めたたえるために、最も完璧な女性像とはいかなるものか、と談論風発するわけである。こうした書物を読むには二つの関心がありえよう。一つはいかにも今風とかけはなれた閑雅な談話を楽しむものとして。いまひとつは時代独自の文化習慣を観察する資料として。どちらも距離が興味をそそる。フェミニズム風の立場から当時の偏見をあぶり出すのは容易だろう。しかしむしろ翻って今日の言説との親近感を意識させられるのも面白い。訳者解説も親切丁寧。