二一世紀の現在、私たちは美術、インターネット、広告、デザイン、写真、映画、テレビ、建築、コンサートなど、さまざまなヴィジュアル・カルチャーにさらされている。元来、視覚に関する文化を読み解く作業は、「美術史学」という学問が一手に引き受けてきた。その学問の成果を踏まえ、さらに学際的に研究を進めていこうという動向が、本書の紹介する〈ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ〉である。本書においては、「文化とは何か」「視覚的とはどういうことか」という根本的な問からはじまり、上記のようなヴィジュアル・カルチャーの制作物が、社会の中でどのように流通し、読解されているのか、そうしたものの「価値」はどのように定められているのか、といったような問題まで考察される。また、様式論のような古典的な理論からフェミニズムやポスト・コロニアル理論など最新の理論まで紹介され、それをどのように応用していくのかも解説される。絵画だけでなく、デザインや建築などを研究したいと思っている学生には恰好の入門書であろう。
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