ジル・モラ『写真のキーワード ──技術・表現・歴史』
 前川修、小林美香、佐藤守弘、青山勝監訳 昭和堂、2001年、2400円(税別)
佐藤守弘 
(本学講師)

1839年、写真術が発表されて160年余が経った。本書は、その間に登場したさまざまな技法や思想を多角的に説明するキーワード集である。挙げられた項目は125。それぞれの項目は、有機的にリンクしている。例えば「バウハウス」を調べると、「ニュー・ヴィジョン」や「ストレート写真」という運動と関係していることが判り、「建築写真」というジャンルとの関係、「フォトグラム」という技法との関連も出てくる。こうして写真の歴史に多角的に理解することができる。本書では、写真発明の最初期からデジタル画像処理に至る諸技法、風景写真やポートレート写真などのさまざまなジャンル、ピクトリアリズム、モダニズムからポストモダニズムへといたる写真制作理論、未来派やポップ・アートなどの美術との関わり、さらには、記号学などの批評理論と、写真のハードからソフトまで網羅している。写真史、写真批評に興味を持っている人には必携のナヴィゲーション・ツールである。