メトロポリタン美術館の版画部門の部長を長く務めた著者による本書は、木版画から写真術に至るまでの西洋における〈印刷画〉の歴史――プリント・カルチャーといってもよいだろう――を考察したものである。イメージとは、美的な機能だけでなく、さまざまな情報を伝達する機能をも具えている。著者は、イメージを、言葉によらない視覚的なコミュニケーションの媒体であると捉え、ヨーロッパにおける知識の流布において、複製技術の果たした役割を論議する。自然科学的、技術的な知識の普及のみならず、美術史や芸術学という学問の成立においても、複製技術の果たした役割は多い。そういった意味において、本書は版画史やデザイン史に興味ある人のためだけのものではない。1953年に書かれた本であるが、いまだに学ぶところは多い。ただし問題は日本語版が絶版であること。一刻も早い復刊を心より願う。
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