山藤章二『似顔絵』
 岩波新書、2000年
佐藤守弘 
(本学講師)

山藤章二『似顔絵』は、現代随一の似顔絵師の著者が語る〈似顔絵論〉。似顔絵とは、単に対象に肖似した絵ではなく、批判の手段である――すなわち、実物そっくりのものではなく、制作者にとって対象がどのように見えるかを写すものである。〈批判〉という表出的な機能を持っているものだと著者は語るのである。もちろんいわゆるアカデミックな著作ではないが、古今のさまざまな肖像画やカリカチュア(戯画)を考える上で、本書は一つの出発点になるのではないかと思われる。