雪舟等楊の没後五〇〇年を記念して、さまざまなイヴェントや書籍が目白押しである。特に京都の国立博物館での特別展は、異様な人気(数時間待ち!)を呼び、また近く始まる東京国立博物館での特別展もまた大入りになることは今からでも予想できる。しかし、さまざまな取り組みにもかかわらず、そうしたものの多くは、雪舟の「画聖」伝説を追認、再生産に終始しているように感じてならない。そのなかでも意欲的な取り組みが、ここで紹介する一冊である。フェノロサか ら橋本治まで、美術史に限らずエッセイ、フィクションに至るまで、数々の言説が並び、それらを検証することができる。それはそのまま、近代的な美術史の歴史ともなっており、近代における「芸術家」像が言説レヴェルでどのように成立してきたかという思想史でもある。ここに描かれているのは、五〇〇年前に生きたある一人の画僧ではない。近代性そのものであるのだ。
|