オペラの舞台裏
 VHSヴィデオマイリオン&スージー・ハリーズ『オペラのすべて 華麗な舞台への招待』
若林雅哉 

この本は、オペラに携わる人々(歌手や演出家はもちろんのこと、支配人から小道具係、カツラ係まで)にインタビューした内容をもとに、オペラ経営・演出・作曲・上演の仕組みを、豊富な写真とともに詳しく明らかにするものである。ここで語られるのは、職業としてのオペラ歌手の生活から、演出家と舞台美術家の綱引きまで、文字通りの舞台裏である。最初から読んでも面白いが、充実した索引が備わっているのでお気に入りの歌手や演出家の発言を拾い読みしても面白いだろう。おすすめは、迫真の演技により「歌う女優」(singing actress)とよばれたソプラノ(のちにニューヨーク・シティ・オペラ監督)、ビヴァリー・シルズのしたたかな発言である(ただし、彼女が老醜のエリザベス一世のメイクについて述べている作品名(p.128)は、おそらくドニゼッティ『ロベルト・デヴリュー』であろう。彼女のその演技は、ビデオ化されている(VAI-69080)。パフォーマンスに興味のある方、そしてグロテスクなメイクに興味のある方は必見である)。