今回は“日本の美術館の現在を考えるために”をテーマとしたい。もちろんテキスト『現代博物館学』(市販版は『現代美術館学』)や日比野秀男編著『美術館学芸員という仕事』『美術館と語る』(ぺりかん社、1994・99年)も多くの話題を提供しているが、いま少し周辺事情に目を配って4件を取りあげ、関連書にもふれてゆくことにする。 まず、ついに単独の一般書が出た、という印象を受けたこの本から。美術館におけるボランティア活動は北九州市立美術館を草分けとし、いまや列島各地で導入されている。本書はそのうち26館における事例のルポを柱とし、美術館学の立場からの寄稿も収録。活動の内容や方法、館側・参加者側のスタンスは様々であり、ボランティアの大きな可能性を教えてくれる。より大きな意味では、ひとは美術館とどう関わりあえるか、という命題へのヒントをいくつも見出すことができよう。 関連書として金子郁容『ボランティア』中野民夫『ワークショップ』(ともに岩波新書)が挙げられるが、こうした博物館活動への市民参加は、故伊藤寿朗氏が提唱した“第三世代の博物館”論(『市民のなかの博物館』〔吉川弘文館〕『ひらけ、博物館』〔岩波ブックレット〕参照)ともリンクするものである。つきあわせて考えてみる価値があろう。
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