梅津次郎監修『角川絵巻物総覧』
 角川書店 1997年 ISBN4-04-851107-6 22000円(税別) 品切
 ■絵巻をさがす
杉崎貴英 

美術館の絵巻の実物にまみえた時、実物ならではの味わいに感嘆しながらも、描かれたストーリーをつかみにくかった 経験をもつ向きは多いだろう。また絵巻は美術史ばかりでなく多方面から関心が寄せられてきたから、どのような絵巻が現存しているのか、絵巻のデータベースは刊行が待たれていたといえる。B5判578頁というボリュームで登場した本書は、数百点に及ぶ遺品について、主題と各場面の内容、美術史上の意義・問題点をまとめたもの。所蔵者や法量などの基本情報をはじめ、参考文献欄には全巻写真を含むものには*印が付されるなど、絵巻を調べる際の入口にも足場にもなるデータが集積されている。編集がかなり長期にわたったものか(刊行当時、監修者と編者の一人は物故されていた)、80年代から活況を呈した文献史学・国文学の側からの成果がいまひとつ吸収されていない憾みはあるが、美術史学側の成果が結集された工具書として誠に有用である。