小松茂美編『日本絵巻大成』(全20巻)『続日本絵巻大成』(全27巻)『続々日本 絵巻大成』(全8巻)
 中央公論新社 1977〜1995年 9800〜48544円(税別)
 ■絵巻をみる
杉崎貴英 

先にふれたように、絵巻が冒頭から巻末まで展観される機会は少ない。そうした事情からみても、代表的な絵巻の全貌を初めてカラー図版で掲載した本シリーズは重要な存在である。正編・続編については『日本の絵巻』『続日本の絵巻』として普及版が(3204〜7000円〔税別〕)、また主要な作品はさらにハンディな版も刊行されている。図版を原寸とした 巻もあり、間接的とはいえ全巻の鑑賞が体験できるし、何より良質な図版は研究を分析的に行うための基本材料となるものだから、本シリーズは絵巻研究に多大な貢献をもたらしたといって過言ではない。ただ当然ながら巻子本である絵巻の構成は冊子本に合致してはいない。そのため画面の真ん中で頁が変わっている箇所がかなり出てくる。こうしたやむを得ない事情によって考察のミスを起こした研究もあるから、本の図版で絵巻を考える際は心しなければならない。