【絵巻を映すービデオ】
杉崎貴英 

□源豊宗ほか監修『国宝 信貴山縁起絵巻』『国宝 源氏物語絵巻』『国宝 鳥獣戯画絵巻』
ビデオチャンプ 各9800円+税
□『日本絵巻大全』全10巻
紀伊国屋書店 各18000円+税
 絵巻の画面は横へ横へと展開していくものだから、とくに連続式の絵巻では画面のつらなり自体が持ち味となる。それが冊子本では、頁の区切りによって損なわれてしまうのだ。その点、ビデオは絵巻の連続性を体感するにふさわしいメディアといえよう。前者のうちでは『信貴山縁起絵巻』がひときわ秀逸。命蓮聖の実像や毘沙門天信仰についてなど、絵巻の背景についてもわかりやすくガイドするが、最も魅力的な点は、常田富士男氏が詞書の現代語訳をナレーションしていることだろう。名手によって生命を吹き込まれた絵巻は、さながら「まんが日本昔ばなし」の如く新鮮に映る。
 ただしビデオでの絵巻の鑑賞は受け身とならざるを得ない。絵巻では読み手にゆだねられるストーリー展開の速度が調節できないからである。何より、ビデオのなかで源豊宗氏も強調された絵巻の「左行性」と、それにもとづく画面の仕掛けが解体されてしまっているのは致し方ないことだろう。