【絵巻をひらくー折本】
杉崎貴英 

□財団法人日本古典文学会編集協力『折本 日本古典絵巻館』(「絵巻名品選」1・2・3、特別配本「国宝 源氏物語絵巻」「旧御物本 蒙古襲来絵詞」)
貴重本刊行会 各85437〜90291円+税
 高畑監督は前掲書において、主要な絵巻についてはできれば巻子本で、少なくとも折本で図版が公刊されることを望んでいる。そうでなくては、横に連続する本来的な画面展開を手にとって体感することができないからだ。
 京都国立博物館のミュージアム・ショップで右の折本が眼を惹いた。カラーオフセット印刷で造本も豪華だが、「名品選」において複数巻からなる絵巻はうち1巻のみが対象となっているなど物足りなさもある。何より価格の高さは仕方のないことなのだろうか。その点、昨年秋の『天神さまの美術』展に際して販売された「北野天神縁起絵巻」の折本は安価であったし、またサントリー美術館編『国宝 信貴山縁起絵巻』展図録(1999年)は、3巻からなる絵巻すべてをカラー図版の折本にまとめ、しかも2000円という安さを実現していた。展覧会という大量部数販売が見込める機会に連動して、絵巻を疑似体験しうる出版物が今後も登場することを期待したい。