□五味文彦『絵巻で読む中世』〈ちくま新書10〉 筑摩書房 1994年 品切 絵巻を通じて中世社会をみてゆこうとするもの。面白いのは最終章で、説話をもとに「猫怖大夫草紙」なる仮想の絵巻を、モンタージュ的に作ってみようという試みが展開されている。架空の対話体を用いた謎解きは、「絵師草紙」をテーマとした『中世のことばと絵 絵巻は訴える』(中公新書)と同様で、読み手を飽きさせない(ただしこの「絵師草紙」の論については黒田日出男氏による説得力ある反論、五味氏の再論がある。こうした「その後」も合わせ読んで絵巻を考えたい本と評されよう)。 ちなみに、より具体的に「絵巻をつくる」体験が、近年の博物館での教育普及活動のなかで試みられている。斎宮歴史博物館の『絵巻を創る 絵師の目で見る源氏物語の面白さ』展(二〇〇一年)や、『天神さまの美術』展において東京国立博物館が実施した小学生対象のワークショップ「絵巻を作ろう」(同年)はその成果であった。
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