【絵画技法について(2)】
大野陽子 

前回は、技法全般についての文献をとりあげましたが、今回は、テンペラ、油彩、フレスコといった技法のうちもっとも参考書の多いフレスコ画に関する文献を挙げたいと思います。


大野彩『フレスコ画への招待』岩波アクティブ新書 2003年(ISBN-10: 4007000832 税込み987円)

もっとも多く頁が割かれているのはイタリア・ルネサンス期のフレスコ画についてですが、古代エジプト、ローマ、エトルリアやビザンティン、また中国や高松塚古墳の壁画について技法や鑑賞ポイントが分かりやすく解説されています。著者自身「描く者の立場で」執筆したとあとがきで述べられているように、技法に関する美術史的な考察は欠くものの、一般向けの入門書としてはおすすめできます。


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一方、同様に一般向けの入門書ですが、ルネサンス期のイタリアのフレスコ画に作例を絞り、フレスコ技法がルネサンス絵画にもたらした革新性にまで言及したのが、1999年にNHKで放送された人間大学のテキストに図版を拡充して出版された以下の文献です。

宮下孝晴『フレスコ画のルネサンス 壁画に読むフィレンツェの美』NHK出版 (ISBN-10: 4140805706  税込み 2625円)

中世から盛期ルネサンスまでのフレスコ画法史をスクロヴェーニ礼拝堂、ブランカッチ礼拝堂、アレッツォの《聖十字架伝説》をはじめとする代表作例を通して辿られています。フレスコ技法とともに、遠近法や図像や作品の機能についても触れられており、随所に差し挟まれたフレスコ技法と遠近法の発展に関する著者の考察によって単なる技法解説書の域に留まらないものとなっています。

ただし、出版から6年ですでに店頭での入手が困難となっていますので、図書館でお捜しいただくしかない状況です。