この分野の文献としては、ジャンソンの『美術の歴史』や先頃新訳がでたゴンブリッチの『美術の物語』など定番となったものがあり、それらもお奨めなのですが、今回は、手軽に入手でき、おそらく皆さんが書店で最も目にしやすいと思われる文献についてその長所と短所をあげておきたいと思います。
高階秀爾監修『カラー版西洋美術史』(美術出版社 初版1990年、改訂版2002年)ISBN: 4568400643 税込\1995
手の届きやすい価格帯と豊富なカラー図版を擁し、年表や地図、用語集も補完された同書は、1990年の初刊以来、美術史の初学者が最初に接する「通史」の(日本人著者たちによる)概説書として最も普及しているのではないかと思われます。記述も簡潔で、全体像を簡便に把握し、代表作を押さえることができますし、総ページ184頁と手頃なヴォリュームなので手元に置いて参照するには最適です。ただ長所は逆に欠点という謂いもあるように、詳細な作品記述がないため作品紹介はややインデックス的なとなってしまっているところもあります。
また、本文に各時代の基準作として紹介されている作品の図版がないといった不備もあるので、できれば、同書で美術史の流れをつかみつつ、さらにもう少しボリュームがあり作品記述が豊富な前掲の概説書で知識を深めていかれることをお奨めします。
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