科研費報告書:『美術館・博物館の展示における性別役割分業観とその社会的影響の研究』その他関連情報
杉崎貴英 

こんばんは。芸術学コース講師の杉崎です。

 さっき、Web上にこんな話題が目にとまりました。

■『中国新聞』2007年7月8日
□「考古学のジェンダー考える」
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200707080037.html

 松本直子氏(岡山大学大学院准教授)による講演「ジェンダー考古学」があったそうで、
 「縄文時代は、男女の権力の差が小さい社会だった」といった内容が論じられたとか。


 また記事によれば、松本氏曰く、
 「性別で分業があった根拠はないのに、現代のジェンダーが投影されている」。

 そういえば、同様の話はつとに、
 毒舌書評家・斎藤美奈子氏の『読者は踊る』〈文春文庫〉で読んだことがありました。


     ◇

 「文化遺産のなれのはて」の部の一つ、
 「豊かな縄文文化の象徴はヘソ出しルックの縄文ギャルか」。

 なんだかものすごいタイトルですが、
 1992年に発掘がスタートした青森・三内丸山遺跡のインパクト以降、
 ブームの観を呈した縄文関連メディアを俎上にのせ、舌鋒鋭く論評する一編です。

 「見たんか、それを。縄文時代の少女は、
  ほんとにミニスカートにヘソ出しルックで暮らしていたんかい!」
 
 これは、「縄文まほろば博」のポスターに対するツッコミですが、
 「縄文文化の解釈といえども、結局は『いま』の文化と直結している」
 と指摘する斎藤氏の筆は、いきおいミュージアムの展示にも及びます。

 斎藤氏が紹介するのは、中園聡氏(考古学)が『朝日新聞』(1995.7.14)によせた短文。
 ある博物館の“古代の住まいの再現展示”の、
 家長らしい男があぐらをかいて、かたわらに正座した女性が酒をつぐ……、
 という情景に、ある留学生が「あの復元は正確なのか」と疑問を呈したことを述べ、


 「現代日本人の常識をそのまま過去の社会に当てはめるのは、
  見学者に誤解を抱かせる」と指摘、
 日本の考古学界にジェンダーに対する問題意識が低いことを述べたものとか
 (現状、私は原文未見です)。
 
 これを承けて斎藤さんは、
 「縄文」まほろば博」や絵本『縄文の子どもたち』にも、
 「そうとう変」な描写があると論じ、こう結んでいます。

 「展示物も本も、プロが監修したわけだから、
  見学者(読者)はとりあえず信じるっきゃない。
  私たちにはその当否を判断する能力も、残念ながらない。
  だが、こう叫ぶ権利くらいはあるだろう。
  見たんか、それを!」。

      ◇

 この『読者は踊る』が文庫版で出たのが2001年。
 その頃、こうした問題に焦点をあてた共同研究が始まっていました。

 「美術館博物館の展示における性別役割分業観とその社会的影響の研究」。

 文部科学省の科学研究費補助金による研究で、
 本学のテキスト『現代博物館学』『日本美術史』にも執筆している森理恵氏が、
 その研究代表者をつとめています。

 その報告書は2004年に出版されていますが、
 こうした《カケン費の報告書》の常、
 国立情報学研究所の「NACSIS Webcat」(http://webcat.nii.ac.jp/webcat.html)


 によれば、所蔵する大学図書館はわずかに12館。
 本学の図書館にも、残念ながら所蔵されていません。

 しかしこの共同研究の概要は、
 Web上で見ることができます。

■国立情報学研究所
□「科学研究費補助金採択課題・成果概要データベース」
http://seika.nii.ac.jp/
 
 この検索画面で、上記の書名(=採択課題名)を入力して検索すると、
 成果の概要が表示されます。

 左上にあるタブ、「採択課題」「実績報告」「成果概要」をそれぞれクリックし、
 また「実績報告」については2001年・2002年・2003年それぞれをクリックすれば、
 この共同研究のおおよそを知ることが可能です。
 
 また、森氏、および共同研究者の原口志津子氏・福田珠己氏による、
 関連研究の書誌情報も記されています。

 私はこの報告書を借覧する機会がありましたが、
 展覧会評がとくに興味深かったです。

     ◇

 なおこうしたテーマに関しては、
 イメージ&ジェンダー研究会(http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Library/9287/)

 が活動を重ね、『イメージ&ジェンダー』誌を刊行しています
 (最新刊は第7号、国立西洋美術館・各ネット書店などで購入可能)。
 
 また関連する研究領域−《女性史研究》の団体として、
 総合女性史研究会(http://wwwsoc.nii.ac.jp/srwh/index.html)
 が、研究発表や講演会、会誌『総合女性史研究』を刊行しているほか、
 (最新刊は23号)

 よく似た名前ですが、女性史総合研究会(http://www.geocities.jp/joseishi_sougou/)

 では、上記の共同研究を分担された原口志津子氏も発表を行っており、
 会誌『女性史学』(http://joseishigaku.opal.ne.jp/)を刊行、
 (最新号は16号)

 また日本女性学研究会(http://www.jca.apc.org/wssj/)
 では、会誌『女性学年報』(最新号は27号)を刊行しており、
 また2004年12月の例会で、上記の共同研究にも関わる
 「美術館 博物館の《性別役割分業》を考える」が開催されています
 (例会記録、および傍聴者のブログ記事を参照
  http://blog.livedoor.jp/mournblade/archives/11516816.html)。

 以上備忘と御紹介まで……。