芸術学コースの杉崎です。
文献紹介を一題。といっても、芸術学や美術史の本ではなく、 国文学の本です。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ■田中貴子 □『検定絶対不合格教科書 古文』 〈朝日選書〉(朝日新聞社、2007年3月) 【出版元のページ】 http://opendoors.asahi.com/data/detail/7957.shtml ※↑このページで「立ち読み」ができます。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ちょうど一年前に出た本です。 お読みになった方、いらっしゃいますか?
著者の田中さんの御専門は中世の説話文学。
道成寺縁起絵巻を論じた章のある『〈悪女〉論』、 それと好一対のテーマによる『聖なる女』、 中世の宗教世界と想像力が照らし出される『外法と愛法の中世』、 猫好きにはたまらない 『鈴の音が聞こえる─猫の古典文学誌─』など、 私の本棚にも何冊か並んでいます。
並行して、古典の楽しみを一般向けに伝えるために、 『日本古典への招待』〈ちくま新書〉、 『古典がもっと好きになる』〈岩波ジュニア新書〉、 などをお書きになっています。
さて今回紹介する上記の本、 教科書というメディアの問題点を論じたなかで、 挿図の問題にふれ さらに日本史教科書における美術作品のそれにも言及しているのです。
そこで引用されるのが、 根立研介氏(京都大学)の論考、
「歴史教科書と美術工芸品の図版をめぐって」(『美術フォーラム21』vol.12)。
根立氏は、本学のテキスト『日本美術史』の彫刻の部分も執筆されています。 東大寺南大門の、運慶・快慶の仁王像の図版が日本人に刷り込んできた、 ある“わかりやすさ”の問題点の指摘には、田中氏も賛同しています。
広く流通し、しかも権力を帯びる教科書というメディア、 そのビジュアルのもつ問題点、 日本美術に限っても、まだまだ論じられる必要があるのだろうなと感じます。
もっとも運慶についていえば、 教科書というメディアに掲載がなかったなら、 多くの日本人があのニュースに関心を抱き、 1万数千人に及ぶ署名が寄せられることもなかったのでしょうか……。
「3月18日」の結果が気になっています。
※クリスティーズHPより http://www.christies.com/LotFinder/lfsearch_coa/LotDescription.aspx?intObjectId=5047076
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