今回紹介する本は、ヴァールブルク学派の美術史家マイケル・バクサンドールが(Michael Baxandall)美術史に社会史の方法論をとりいれた最初の論考Painting and Experience in Fifteenth-Century Italy: A Primer in the Social History of Pictorial Styleの邦訳です。
M. バクサンドール『ルネサンス絵画の社会史』篠塚ニ三男他訳 平凡社 1989 年 ISBN 978-4582238150
現在、「美術作品」として美術館に納められているものの多くが、制作当初は、単に純粋に鑑賞の対象としてではなく、時代や社会の要請のなかでなんらかの機能をもつものでした。バクサンドールは、15世紀イタリアのルネサンス美術という美術史の歴史のなかでも取り上げられることの多い(そして、その分、語り尽くされてきた感のある)領域を対象にして、当時の社会における作品の機能や、美術への投資の意味を、同時代の文献を駆使して明らかにし、人びとがいかなる「目」で作品を享受し、認識していたのかに注目して、美術と社会の関係に迫っています。ルネサンスに興味をお持ちの方はもちろんのこと、美術史をこれから学ぶ方にとっても必読の書です。
ニュー・アート・ヒストリーの重要な成果である本書の邦訳版は、残念ながら、すでに書店では入手不可能となっていますが、大型の図書館では所蔵されている可能性の高い文献です。また、原文の英語は比較的平易であり、ペーパーバック版は安価に入手できますので、英語が苦手ではないという方ならば、そちらで読まれてもよいかもしれません。
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