拈華微笑2016(7):マリメッコ展

カテゴリー: 『雲母』について |投稿日: 2016年11月26日

熊倉一紗(教員)
豊かな森や湖に囲まれ、ムーミンを生み出し、優れた社会保障制度を維持している国といえば……そう、フィンランドです。フィンランドは、デザインにおいても優れた作品の数々を生み出してきました。そんなフィンランド・デザインを代表する「マリメッコ」の日本初となる大規模な巡回展が現在、開催されています。

マリメッコ(マリーのドレスを意味)とは、1951年にアルミ・ラティアによって創業されたアパレル企業、ファッションブランドです。マイヤ・イソラがデザインした「ウニッコ(ケシの花)」(写真参照)に代表されるように、マリメッコは世界的に愛され、日本でも高い人気を誇っています。では、その人気の理由はどこにあるのでしょうか? まずは、デザインの独自性があげられるでしょう。ゆらぎを含んだ素朴な手描きの線は大胆で、温かみが感じられます。モチーフも花や樹木、波に魚のウロコ、水玉に幾何学的な線と多岐にわたっています。そのモチーフの多くが自然から大きな影響を受けているというのも、安らぎや癒しをもたらしてくれそうです。鮮やかな色使いもまた人気の要因の一つでしょう。北欧の冬の訪れは早く、日照時間は極端に短い。その冬の厳しさを和らげ、乗り越える糧になっているのがマリメッコの鮮やかな色彩にあるといいます。自然の環境を受け入れ、素直に反応しデザインに取り入れていく。そんな率直さがマリメッコデザインの魅力なのかもしれません。また、日本では、工業デザインと芸術の分野には、はっきりとした区別があるように思います。さきほど手描きの線について触れましたが、マリメッコのテキスタイルデザインはクレーの絵にたとえられます。機械的で無味乾燥としたものでなく、デザイナーの自由な感性が発揮されたデザインもまた、人々を惹きつける要因となっているのでしょう。実は、マリメッコのファブリックデザインには、2人の日本人デザイナーが関わっています。1人は脇阪克二氏で、具象的なデザインという新しい道を切り拓いていきました。もう一人は石本藤雄氏で、着物風ドレスをデザインしています。2人とも1970年代に旺盛に活躍していたそうです。知っているようで知らなかったマリメッコの魅力が堪能できる展覧会は、11月27日(日)まで西宮市大谷記念美術館で、その後12月17日(土)から2017年2月12日(日)まで東京のbunkamuraザ・ミュージアムに巡回する予定です。興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
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