大エルミタージュ美術館展

カテゴリー: 愉快な知識への誘い美術館・展覧会情報 |投稿日: 2017年12月28日

加藤志織(教員)

 世界三大美術館の一つに挙げられることもあるエルミタージュ美術館の貴重なコレクションの一部を展示する企画展が、2017年の春から日本を巡回中です。まず3月中旬の東京を皮切りに、7月からは名古屋の愛知県美術館、そして10月からは兵庫県立美術館に移動して現在公開されている。その大エルミタージュ美術館展について紹介します。

 この企画展は主にヨーロッパ美術のオールドマスター、すなわちルネサンス、バロック、ロココといった16~18世紀に活躍した巨匠たちの作品を集めたものです。展示はこの趣旨にそった明快な内容で、会場に入るとまずイタリアのルネサンスからバロックの絵画が出迎えてくれます。つぎは17世紀のオランダ絵画、つづいて17世紀のフランドル絵画、そして17世紀のスペイン絵画、17~18世紀のフランス古典主義絵画とロココ絵画、最後に16~18世紀のドイツとイギリスの絵画の順となっています。
 ただ、残念ながら16世紀の作品は、ヴェネツィア派の巨人ティツィアーノの絵画や北方ルネサンスを代表する画家ルカス・クラーナハの手になる絵画などが少数含まれるだけで実質的には、バロックとロココの展覧会です。いずれにせよ日本ではまとめて鑑賞することが困難な作品を85点も同時に見ることができる貴重な機会と言えます。
 ところで、西洋美術史における「バロック」という用語には大きくわけて二つの使い方があります。一つは、まさに17世紀イタリアの美術、たとえばカラヴァッジョやピエトロ・ダ・コルトーナの絵画、あるいはベルニーニの彫刻作品などに典型的にみられる、劇的・力動的で感情に訴える表現様式。もう一つは17世紀(あるいはマニエリスムとロココの間の時代)を意味する時代概念。
 このようにバロックという言葉には使いわけが存在する上に、さらに単純な理解を阻む要因があります。それはバロック美術に地域的な多様性がみいだされること。もちろんバロック美術には共通する特徴もみられますが、イタリアのバロック美術、フランスのバロック美術、オランダのバロック美術には、それぞれの特徴がはっきりと表れています。
 実際、イタリアのバロック美術に典型的にみられる劇的・力動的な表現様式は、フランスやオランダではそれ程顕著ではありません。そのために、17世紀のヨーロッパ各地の美術をバロックという様式概念によって一括りにすることに疑問を投げかける者も存在します。
 こうした各地域のバロック期の作品の様式上の相違は、言葉で理解するよりも、やはり間近で実際に見学することによって明瞭に看取できます。その点で、本展は非常に役立ちます。イタリア、オランダ、フランドル、スペイン、フランスといった各地域のバロックの特徴と相違点を自分の目で確認してみると面白いでしょう。

大エルミタージュ美術館展は2018年1月14日(日)まで兵庫県立美術館で開催されています。


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