この秋は正倉院北倉の宝物に注目!

カテゴリー: 美術館・展覧会情報 |投稿日: 2019年6月9日

金子 典正(教員)
 皆さん、こんにちは。金子です。あっという間に6月となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。今月が終われば一年の半分が終わってしまいます。本当に早いですね。さて、今年は年が明けてから新天皇の御即位を記念して全国各地の寺社仏閣で様々な特別公開が行われていますが、先月の今年の奈良国立博物館の正倉院展の発表にあわせて、東京でも正倉院宝物をみることができる「御即位記念特別展 正倉院の世界 皇室がまもり伝えた美」が東京国立博物館で10月14日(月)~11月24日(日)に開催されることが報道されました。奈良国立博物館と東京国立博物館で正倉院宝物を同時に展示するのは初めてのことで、さらに今回の御即位を記念して、いずれも超有名な宝物が久しぶりにお披露目されます。

 まず、聖武天皇の遺愛の品々が何故正倉院に納められているのか? その由来を記すのが、聖武天皇が崩御した四十九日にあたる天平勝宝8年(756)6月21日に作成された国家珍宝帳です。冒頭には光明皇后による撰文が記され、それに続いて東大寺大仏に喜捨された600点を超える聖武天皇の遺愛の品々のリストが続きます。そのリストの表記は宝物の名称、寸法、材質、色彩など大変細かく記されており、そのおかげで現存する宝物がリストのどれに当たるのかがはっきりと分かります。つまり、奈良時代の天皇が実際に使用していた品々が、当時の記録によって確実に確定できるという、美術史の研究にとってはこのうえない重要で貴重な宝物なのです。こうした宝物は北倉に納められ、その品々は国家珍宝帳に記された帳内宝物として大切に大切に守りつたえられてきました。ですので、会場で作品のキャプションに「北倉」と記されていたなら、じっくり目を凝らして観て欲しいと思います。
 すでに発表されていますが、奈良国立博物館では国家珍宝帳のリストの冒頭に記されている聖武天皇が使用していた七條刺納樹皮色袈裟、天武天皇から歴代の天皇に受け継がれた赤漆文槻木御厨子、そして鳥毛立女屏風が20年ぶりに6扇すべてが揃って出陳されます! あーもう、絶対奈良に行かなくてはなりませんね。東京国立博物館では螺鈿紫檀五絃琵琶、平螺鈿背八角鏡、蘭奢待などやはり超有名な作品が出陳されますが、上記の国家珍宝帳も展示されますので、冒頭の光明皇后の撰文に是非注目して欲しいと思います。展覧会の図録をたよりにその内容を理解すると、そこには思いもよらず夫を失った一人の女性の深い悲しみがストレートに表現されています。今回の展覧会を機にじっくり読んでみてください。北倉の宝物の鑑賞もより一層深いものになるでしょう。それでは、また!

奈良国立博物館 正倉院展HP
https://www.narahaku.go.jp/exhibition/2019toku/shosoin/2019shosoin_index.html

東京国立博物館 御即位記念特別展 正倉院の世界HP
https://artexhibition.jp/shosoin-tokyo2019/


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