池野絢子(教員)

図1:ジーノ・セヴェリーニ《母性》1916年、カンヴァスに油彩、92×65cm、エトルリア美術館、コルトーナ

図1:ジーノ・セヴェリーニ《母性》1916年、カンヴァスに油彩、92×65cm、エトルリア美術館、コルトーナ

 第一次世界大戦の前後から第二次世界大戦が始まるまでの戦間期、ヨーロッパの前衛芸術家たちの多くが、それまでの前衛的な画風を捨てて「古典性」や「伝統」の重要性を説き始める。作家のジャン・コクトーの著作に因んで、一般に「秩序への回帰」と呼ばれるこの傾向は、大戦によって生じた破壊と混乱のなかから、再び秩序を取り戻そうとした芸術上の動きであると理解されている。

池野絢子(教員)

クルト・シュヴィッタース、ハノーファー・メルツバウ、ヴィルヘルム・レーデマン撮影、1933年(図版出典:Karin Orchard, “Kurt Schwitters: Reconstructions of the Merzbau,” Tate Papers, no.8, Autumn 2007, accessed 14 December 2016.)

クルト・シュヴィッタース、ハノーファー・メルツバウ、ヴィルヘルム・レーデマン撮影、1933年(図版出典:Karin Orchard, “Kurt Schwitters: Reconstructions of the Merzbau,” Tate Papers, no.8, Autumn 2007, accessed 14 December 2016.)

 ドイツのハノーファー出身のダダイスト、クルト・シュヴィッタース(1887-1948)。その彼がライフワークとした作品「メルツバウ(メルツ建築)」は、廃物やがらくたのアッサンブラージュ、および白い板と石膏の幾何学的立体からなる、複合的構築物である。1923年、シュヴィッタースはハノーファーにあったアトリエ兼住居でその制作を始め、