杉﨑貴英(芸術学コース教員)

 古都の風景にとけこむ青銅の巨像、鎌倉大仏(阿弥陀如来坐像、国宝)を訪れたことのある方は多いでしょう。唱歌「鎌倉」にもうたわれるこの「露座の大仏」は、鎌倉のランドマーク的存在です。しかし本書の冒頭で「意外なほどに基本的なことが分かっていないのである」と著者が記すように、また清水眞澄氏の『鎌倉大仏─東国文化の謎』〈有隣新書13〉(有隣堂、1979年)もその書名に題するように、さまざまな謎に包まれています。いつ? 誰が? なぜ? ──それを直接に語る史料は全くないうえに、尊名を釈迦と記していたり、先に完成した木造の大仏と現在の大仏との関係がよくわからなかったり、数少ない史料についてもどう整合的に解釈するかが問題となってきました。

杉﨑貴英(芸術学コース教員)

 宇治平等院の鳳凰堂といえば、“平安貴族の浄土への憧れを今に伝える国宝建築” として、安置される阿弥陀如来像や雲中供養菩薩像とともにあまりにも有名です。そんな鳳凰堂についてのわかりやすいガイダンス・ブックかな…とも受け取れそうなタイトルですが、実は通説的な理解をトータルにとらえなおす、知的挑戦の書なのです。

今月の一冊:芸術学関係雑誌について

カテゴリー: 『雲母』について |投稿日:2011年8月20日

杉崎貴英(芸術学コース教員)

 この「今月の一冊」欄、通常は新刊を中心に単行本をとりあげるのですが、年度始めにあたり、今回は芸術学関係の雑誌をいくつか紹介することにしました。 まず『芸術新潮』(新潮社、毎月25 日発売)。国内から海外まで、古美術から現代アートまで全般を対象とする雑誌です。話題の展覧会にスポットを当てたり、最近のニュースにちなんだりする毎号の特集は、読みやすくもボリュームたっぷり。芸術系大学に学んでいるからには、少なくともこれだけは毎月チェックしましょう。

杉崎貴英(本学講師)

木下史青氏は、東京国立博物館で展示デザイナーとして活躍中の方。

【プロフィール】http://webarchives.tnm.jp/members/shisei/ 【インタビュー】http://www.tansei.net/casestudy/no16/tnm/main.htm 【東博の展示】http://www9.plala.or.jp/gentleman/inoken/05TYO/05tyo.htm 【大学の授業】http://www.pcs.co.jp/joshibi07/jsb_univ_syllbs15.pdf (pdfファイルです。34ページ目。「展示デザイン」で検索すると便利)

杉崎貴英(本学講師)

こんばんは。芸術学コース講師の杉崎です。さっき、Web上にこんな話題が目にとまりました。  

『中国新聞』2007年7月8日「考古学のジェンダー考える」http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200707080037.html ※リンク切れ

松本直子氏(岡山大学大学院准教授)による講演「ジェンダー考古学」があったそうで、「縄文時代は、男女の権力の差が小さい社会だった」といった内容が論じられたとか。また記事によれば、松本氏曰く、

杉崎貴英(本学講師)

こんばんは。芸術学コースの杉崎です。  

『中古文学』第79号〈学会創設40周年記念号〉2007年6月 中古文学会(http://wwwsoc.nii.ac.jp/chu-ko/)発行
記念シンポジウム(2006年度秋季大会にて)「〈中古文学〉の将来 研究・学会・社会」

杉崎貴英(本学講師)

 ちょうど一年前に出た本です。お読みになった方、いらっしゃいますか? 著者の田中さんの御専門は中世の説話文学。道成寺縁起絵巻を論じた章のある『〈悪女〉論』、それと好一対のテーマによる『聖なる女』、中世の宗教世界と想像力が照らし出される『外法と愛法の中世』、猫好きにはたまらない『鈴の音が聞こえる─猫の古典文学誌─』など、私の本棚にも何冊か並んでいます。並行して、古典の楽しみを一般向けに伝えるために、『日本古典への招待』〈ちくま新書〉、『古典がもっと好きになる』〈岩波ジュニア新書〉、などをお書きになっています。

杉崎貴英(本学講師)

 高校までの学校教育で、日本の美術のことを教わったのはどんな機会だったでしょう?美術科での鑑賞教育の大切さが見直されてきたのは最近のこと、ほとんどの方々は、日本史の授業だったのではないでしょうか。それはいわゆる「文化史」のさらに一ジャンルでした。受験勉強の頃を思いかえせば、やるべきことは作品名・作者名はもとより、位置づけや評価までが定式化された“重要事項”のインプット。参考書に写真があるのは数点だけ、小さな図版が申し訳程度に載っていて、それも教科書では白黒だったりする。そういえば大きさの説明さえなかったぞ。今から思えば、そんな情報だけで「わかる」ことが求められるとは理不尽な気もするが、期末テストの前なんか、消化不良のまま丸呑みもしたっけ──などと回想する向きは、結構多いのではないでしょうか?

杉崎貴英(本学講師)

 2001 年7月刊。本誌12号の文献紹介で佐藤守弘氏が述べられたように、90年代にはこれまでの日本美術史の言説を再検討する研究が相次いだ。例の雪舟展は既に8年前から準備が始まっていたというから、さきに述べたような関係図書の傾向もそうした90年代の動きの所産といえよう。京都にあって京焼の研究に取り組んでこられた著者による本書もまた、こうした状況にリンクするものである。

杉崎貴英(本学講師)

「鉈彫」とは、普通ならば平滑に仕上げるべき表面に、ざっくりとした丸鑿の痕を残した木彫仏像のこと。未完成なのか完成とみるべきか、かつて意見が分かれていたが、説得力ある完成説と東日本での偏在を論じられたのが久野健氏であった(概要は同氏『仏像風土記』〈NHKブックス〉1979年参照)。その論が結実したのが写真家田枝幹宏氏との共著『鉈彫』(六興出版、1976年)である。鉈彫完成論はかくて定説化したのであるが、やがて井上正氏(現・本学教授)により初期木彫仏の年代観と造像思想が再検討されるなかで、鉈彫である理由が改めて問われるに至ったのである。