佐藤守弘(本学講師)
モノは一体どのようかプロセスを経て、美術品になるのだろう。そこには一体どのような力学が働いているのだろう。昨今では、こうした疑問を共有する者たちが、「美術制度」の批判的研究を繰りひろげている。もはや、「美術品は本質的に美術品たるべき何物かを内包しているからだ」というようなナイーヴな答えで満足する人は少ないであろう。
佐藤守弘(本学講師)
別記の考現学は、一九八〇年代、唐突に復活する。名を〈路上観察学〉と変えて。その中心人物であった赤瀬川原平による〈超芸術トマソン〉──上がって降りるだけの階段、すなわち〈純粋階段〉など、都市のあらゆるところに発見される無用の〈物件〉──は、都市が無意識的に作り上げてしまった〈芸術〉として路上観察の対象となった。
佐藤守弘(本学講師)
イギリスの若者文化には、モッズ、スキンヘッズ、パンクスなど、さまざまな〈トライブ〉が存在した。それらの多くは、特定の音楽を聴き、特定の決まり事を持ち、非常に細かく決められた服装の規則を遵守していた。記号論、ヘゲモニー論などの方法論をもって、本書においてはそれらのスタイルの意味や機能が、精密に分析される。それは、階級やエスニシティと分かち難く関わった記号であった。イギリスにおけるカルチュラル・スタディーズの黎明期に書かれた好著である(翻訳には問題が少々見受けられるが) *記事初出:『季報芸術学』No.15(2001年12月発行)
佐藤守弘(本学講師)
現代日本の視覚文化を考える上で、マンガ(漫画/コミックス)を無視することはできない。マンガについて書かれた書籍/雑誌も多く出版され、「大学生がマンガを読むなんて」と嘆かれたのが遠い昔のことにように思われる。数年前には、美術史学会の全国大会でシンポジウムのテーマに選ばれ、昨年には、日本マンガ学会が発足した。また、いわゆるアートの世界にも、〈マンガ的なもの〉をモティーフとして、あるいは手法として用いる作家が増えている。