過去サイトの記事

…旧サイトで公開していた記事を再掲載しています。文献案内を中心として学習の大きな参考になりますので有効にご活用ください。

文献案内:メディア論の諸相

カテゴリー: 過去サイトの記事 |投稿日:2003年12月19日

佐藤守弘(本学講師)

 現代に生きる私たちは、普段に大量の視覚的な情報に曝されつづけている。家のなかでは雑誌、テレビ、ヴィデオ、ゲーム、ウェブ。外に出れば街頭の広告、看板、巨大モニターなど。こうした視覚的刺激は、近代以降、加速度的に増え続けている。こうした現実に対して、私たちはどのように対処しているのだろうか? こうした疑問こそがメディアを考えることの出発点にある。

佐藤守弘(本学講師)

 本書は、Vision and Visualityという原題の、視覚文化論の基礎的テクストと呼んでもよい論集である。非常に単純化して言えば、〈視覚〉とは、生理的なメカニズムによって「見る」ことを意味し、〈視覚性〉とは社会的・歴史的に構築された「見る技法」のことを指す。ところが近代におけるさまざまな〈視の制度〉は、この二種類の〈見ること〉の差異を隠蔽し、自然化してきた。

佐藤守弘(本学講師)

〈映像作品〉としてではなく、〈行為〉として写真を読み解く。フランスの精神分析家によって書かれた本書は、そういった新しい試みに挑戦したものである。人は、様々な経験を自らの心的な必要を充たすものに加工することによって、いわば経験を〈消化〉している。このプロセスが、心理学でいう〈象徴化〉の過程である。ところが、さまざまな理由によって象徴化されえないものが残る。

佐藤守弘(本学講師)

 昭和初期、妙な集団が東京の路上に現れた。建築史家、今和次郎に率いられたこの集団は、自らを〈考現学者〉と名乗っていた。ノートを持ち、道を歩く人の姿をスケッチし、その服装や行動の統計を取る。あるいは、茶碗がどのように欠けるか、割れたガラス窓はどのように修理されるか。彼らの眼は、あてどもなく、都市の表層をくまなく走査しつづける。

佐藤守弘(本学講師)

 今回紹介する文献は、1970年から85年批評家、多木浩二による写真論をまとめたものである。彼は、『眼の隠喩──視線の現象学』(青土社、1988年)、『天皇の肖像』(岩波書店、1988年)、『写真の誘惑』(岩波書店、1990年)などで、写真を広い視点から見た独自の批評を展開してきたが、本書はそれらに収められなかったテクストを比較的初期のものを中心にまとめたものである。

佐藤守弘(本学講師)

 明治維新の後、さまざまな概念が西洋から輸入された。「美術」という概念もまた、明治期に翻訳されたものの一つである。江戸期までは渾然一体としていたさまざまな視覚文化の制作/受容の現場に、「美術/工芸/工業」というヒエラルキーが導入され、また同時に「美術史」という学問領域も成立した。1880年代のことである。しかし、これは近代の国民国家として生まれ変わろうとしていた明治国家の政策と緊密に結びついたものであった。

文献案内:都市空間モダニティ・視覚文化

カテゴリー: 過去サイトの記事 |投稿日:2003年12月19日

佐藤守弘(本学講師)

 パリ、ロンドン、ニューヨーク、東京、上海。巨大都市は絶えず視覚的な刺激を発散し続ける。さまざまな思想が都市を語ろうとしてきた。しかし、そのような言説を飲み込むようなかたちで都市は増殖していく。都市について考えることは、モダニティについて考えることであるともいえる。そのすべてを網羅することは当然できようはずもないが、都市に関する思考のごく一部を紹介してみたい。

佐藤守弘(本学講師)

 イギリスの思想家、ジェレミー・ベンサムは〈パノプティコン〉と呼ばれる画期的な監獄を考案した。それは「一望監視装置」と訳されるもので、独房は円形に配置され、看守はその中心にいて全てを見渡すことができる。独房は明るくされ、看守の部屋は暗いので、看守は一方的に囚人を監視し、反対に囚人からは看守の姿は見えない。したがって、看守がいようといまいと、囚人はつねに「監視されている」と感ずる。すなわち、まなざしの内面化である。この監獄をてがかりに、フーコーは近代国家において、規律=訓練が国土の全てにはりめぐらされていくメカニズムを解読する。近代における〈まなざし〉の問題を考える上で避けては通れない視覚文化論の基礎テクストである。

*記事初出:『季報芸術学』No.15(2001年12月発行)

上村博(本学教授)

 2003年12月14日、ヴェネツィアの劇場ラ・フェニーチェ(不死鳥)が再開した。

 フェニーチェ劇場は1792年5月16日に創建され、ロッシーニの『タンクレーディ』『セミラーミデ』や、ヴェルディの『エルナニ』『リゴレット』『ラ・トラヴィアータ』など多くの作品がそこで作られてきたが、その途中、1836年にも火災に遭っている。今回、1996年の1月に電気系統の失火で焼失して以来、ほぼ8年ぶりに劇場として再開するが、これは1837年当時に再建された状態を復元したものとなっている。

佐藤守弘(本学講師)

 明治後期から大正時代には、現在の視覚文化研究の先駆ともいえる研究がさまざま行なわれていた。宮武外骨の浮世絵/絵葉書研究、権田保之助の民衆娯楽研究、柳宗悦の民芸運動、今和次郎の考現学など。柳田国男の民俗学も含めていいかもしれない。近世/近代のさまざまなポピュラー文化を見据えた研究である。もちろん現在の視覚文化研究とは、特に理論面において大いなる断絶があることは強調しておかなければならない。