文献案内:ミシェル・フーコー『監獄の誕生──監視と処罰』新潮社、1977年

カテゴリー: 過去サイトの記事 |投稿日: 2003年12月19日

佐藤守弘(本学講師)

 イギリスの思想家、ジェレミー・ベンサムは〈パノプティコン〉と呼ばれる画期的な監獄を考案した。それは「一望監視装置」と訳されるもので、独房は円形に配置され、看守はその中心にいて全てを見渡すことができる。独房は明るくされ、看守の部屋は暗いので、看守は一方的に囚人を監視し、反対に囚人からは看守の姿は見えない。したがって、看守がいようといまいと、囚人はつねに「監視されている」と感ずる。すなわち、まなざしの内面化である。この監獄をてがかりに、フーコーは近代国家において、規律=訓練が国土の全てにはりめぐらされていくメカニズムを解読する。近代における〈まなざし〉の問題を考える上で避けては通れない視覚文化論の基礎テクストである。

*記事初出:『季報芸術学』No.15(2001年12月発行)


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