池野 絢子(教員) 「黄金のアデーレ」(2015年)という映画をご存知でしょうか。グスタフ・クリムトの描いた《アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I》(1907年・図1)という絵画をめぐる物語です。金地の上に美しく着飾った女性が豪華で装飾的な技法で描かれた、クリムトの代表作の一つであり、大変魅力的な絵画なのですが、映画は制作経緯の話でも、クリムトの生涯の話でもありません。そこに描かれた女性アデーレと、その作品の所有者をめぐる物語です。
池野絢子(教員)
ドイツのハノーファー出身のダダイスト、クルト・シュヴィッタース(1887-1948)。その彼がライフワークとした作品「メルツバウ(メルツ建築)」は、廃物やがらくたのアッサンブラージュ、および白い板と石膏の幾何学的立体からなる、複合的構築物である。1923年、シュヴィッタースはハノーファーにあったアトリエ兼住居でその制作を始め、池野絢子(教員) 美術作品にも、小説にも、ポップ・ミュージックにも、どんな分野にも「古典」と呼ばれるものがある。研究にも、「古典的名著」なるものが存在していて、その分野を志す人にとっては必読書だ。あるいは、日本人にとっての『源氏物語』のように、ある文化圏の人が共有している「古典」もあるだろう。対象は異なれど、多くの人にとって古典的作品/著作といえば、やはり知っておきたいもの、知っておいて損はないと思われるもの、なのではないだろうか。
池野絢子(教員)
三月、イタリアへの調査旅行で、北イタリアはロンバルディア州にある都市ヴァレーゼを訪問しました。ミラノから鈍行で約一時間、コモ湖の西側に位置する街です。ヴァレーゼといえば、エステ家の宮殿と庭園で有名ですが、今回の私の旅の目的は、街の中心部を見下ろす小高い丘の上にある一軒の瀟洒な邸宅、パンツァ荘でした。 その名を冠されたジュゼッペ・パンツァ・ディ・ビウモ(1923-2010)という人物をご存知の方は、ほとんどいないでしょう。彼は、イタリアでは有数の現代美術のコレクターであった人物で、とくにアメリカの抽象表現主義とミニマル・アートの膨大なコレクションを有していました。私は去年から、この人物に関心を持って調査を続けています。なぜか? というと、彼の現代美術に対するこだわりがとても独特だったから。パンツァは、作品の収集に情熱を傾けただけではなく、作品を「どこに、どのように置くのか」が重要な問題であると考えた、稀有なコレクターだったのです。その結果パンツァは、抽象的で幾何学的なアメリカの現代美術を、歴史あるヨーロッパ貴族の邸宅に展示することになります。