文献案内:中村興二・岸文和編『日本美術を学ぶ人のために』世界思想社、2001年

カテゴリー: 過去サイトの記事 |投稿日: 2003年12月19日

佐藤守弘(本学講師)

 本書は、タイトルから連想されるような古代から現代に至る「日本美術の流れ」を記した通史ではない。編者たちはまず「美術作品」をコミュニケーション・メディア、すなわち〈注文→生産→流通→消費〉という一連の過程の中で、情報を伝達する媒体(メディア)として捉えて、そのコミュニケーションの全体像を明らかにする。日本のさまざまな時代に、どのような人々がどのようなかたちで「美術」に関わってきたか、「美術作品」はどのような場所でどのような時に使われてきたか、美術の価値を決めてきたのは誰か、など日本美術の姿をいきいきと描き出すのが本書の目的である。また、巻末にまとめられた、日本美術に関係する日記などの第一次資料三十五件を紹介する章は圧巻。

*記事初出:『季報芸術学』No.11(2001年6月発行)


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