拈華微笑2012(3):最初は軽い気持ちで
三上美和(芸術学コース教員)
皆さんこんにちは。暑い夏も始まり、週末ごとにスクーリングにテキスト科目にと忙しくされている頃でしょうか。春からの学習計画通りの方もいればそうでない方もいらっしゃるでしょう。お恥ずかしい話ですが、私はまさに後者で予定通りにことが進んだことは滅多にありません。子供の頃から根気がなく、さらに運動神経も乏しかったため運動会は本当に辛く雨天中止を毎年願っていました(一度もそうなりませんでしたが)。
日頃から運動不足で体力にも自信がありません。旅先では必ず城や塔といったその町のランドマークに登りたくなるのですが、そこでもすぐに息切れしてしまいます。最近では新潟の村上という古い城下町の平山城に登りました。といっても135メートルですから登ったうちに入らないかもしれませんが、「七曲がり」と言われる急な階段は運動不足の身にはこたえました。けれど頂上に着いて眼下に城下町とその先の日本海を一望した時は本当に爽快そのもので、いつものことですが「やめればよかった。」と悪態をついたのが悔やまれました。大変なことの後に嬉しいことがあるというお手本のような経験ですが、この時ふと、これが大事なのかもしれないという気がしました。辛いことのあとに嬉しいことがある、努力すれば良い結果につながると頭では分かっていてもなかなかそう思い通りに体は動いてくれません。でも「ちょっと登ってみるか」という気軽な気持ちでやってみると、案外いつのまにか後戻りできないところまできて結局登り切る、そんなふうになるのではないでしょうか。
根性無しだった私も大学受験の時にはさすがにそれではどうにもならないと腹をくくって勉強しました。そのあとも現在までいくつか山を越えてきましたが、その過程で勤勉になったかというととてもそうは思えません。そんな怠惰な私がなんとかやってこられたのは家族や周囲の方々の理解と協力のおかげであることは言うまでもないのですが、ここまで来たのだからもうちょっと頑張ってみよう、と少しずつ進んできたからこそ続けてこられたような気がします。
皆さんのレポートを拝見すると本当にお忙しい中よくやっておられるといつも感銘を受け、ふがいない自分を反省しています。でも、もし皆さんの中で頑張れないと悩んでいる方がいらっしゃったら、もしかすると目標が今の自分に高すぎるのかもしれません。少しハードルを低くして少しずつ進んでみると、いつのまにか体力もついてきて自分でも驚くような高いところで遥かな景色を眺めることがあるかもしれません。
*記事初出:『雲母』2012年7月号