芸術学コース主催公開講座のお知らせ
下記の日程で芸術学コース主催の公開講座を開催いたします。今回の講座では池野絢子教員をファシリテーターとし、東京では演劇史がご専門の杉山博昭先生を、京都では記号学がご専門のマッシモ・レオーネ 先生をお招きし、以下のテーマでお話しいただきます。受講料は無料、事前申込みも不要ですので、みなさん、是非ご参加ください。芸術学コース以外の方、一般の方、どなたでも聴講可能です。みなさん奮ってご参加ください。
■東京
日時:2016年2月6日(土)
16:30 開始~ 18:20 終了予定
(80分講義、30分程度の質疑応答)
会場:東京外苑キャンパス(教室は当日掲示)
講師:杉山博昭先生
早稲田大学高等研究所助教
1975年八尾市生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都教育大学非常勤講師などを経て現職。専門は西洋演劇史・祝祭史・美術史。著書に『ルネサンスの聖史劇』(中央公論新社、2013年、第5回表象文化論学会賞奨励賞)など。
講義内容:
「全天を回すクランク――聖史劇というスペクタクル」
ルネサンス期のフィレンツェは、西洋美術史上のひとつの「中心」として長らく注目を集めてきた。一方、その「中心」に寄り添うように開催されたひとつの行事は、これまでほとんど顧みられなかった。その行事とは「キリスト教と異教」、「聖書と芝居」、「奇跡と外連」、「ほんものとにせもの」が渾然と絡み合う坩堝のような演劇である。またその演劇は、当時の大工・ブリキ工・金細工師・画家・毛織物商など多くの市民が知恵をしぼり、腕をふるって問題解決に挑む場でもあった。たとえばその問題には、「マリアはいかに美しいのか」、「星々はいかに運行するのか」、「聖霊はいかに恩寵を施すのか」、「イエスはいかに天へ昇るのか」、そして「天使はいかに空を飛ぶのか」などがある。本講義は、全ヨーロッパから集まった当時の見物客が、この一連の演出をいかに捉えたのかを確認しつつ、同時代の絵画作品に向けられた「眼差し」を再検討するものである。
■京都(大学院芸術環境研究領域との共同開催)
日時:2016年2月14日(日)
14:00 開始~ 16:20 終了予定 (80分講義、60分程度の質疑応答)
会場:瓜生山キャンパス至誠館1階S11教室(予定)
講師:マッシモ・レオーネ先生
トリノ大学教授。専門は、文化記号学、視覚記号学。ソルボンヌ大学(宗教学)、フリブール大学(美術史)で博士号を取得。フランス国立科学研究センター客員研究員、京都大学客員教授などを歴任。単著に『受胎告知 宗教記号学の道筋』(2014)、『シグナティム 文化記号学の輪郭』(2015)など多数。
講義内容:
「デザインの形而上学—デ・キリコ、キアロスタミ、小津安二郎におけるオブジェの感覚」
手袋、耳飾り、りんご—日常にありふれた陳腐なもの。しかしそれらは、ある特別な仕方で表象されることによって、それ自体とは別のものになる。すなわち、イタリアの形而上絵画の主導者だったジョルジョ・デ・キリコが常に描こうとした「永遠のしるし」になるのである。言いかえるなら、それら日常的な事物によってあたかも現実のうちに裂け目を開かれ、不穏なもの、非時間的なもの、超越的なものへの突破口が生みだされのだ。
本講義では、この「デザインの形而上学」について、ジョルジョ・デ・キリコ、アッバス・キアロスタミ、小津安二郎の三人の芸術家を取りあげて考察する。彼らは、時間的にも空間的にも遠く離れていながら、ある同一の関心によって密やかに結ばれている。彼らが関心を抱くのは、日常の襞のうちに完璧にカムフラージュされ、隠された存在の秘密を探査することなのだ。