行ってきました&これからの展覧会

カテゴリー: お知らせ, 愉快な知識への誘い, 美術館・展覧会情報 |投稿日: 2017年7月10日

三上美和(教員)
 皆さん、こんにちは。ものすごく久し振りの更新ですが、お変わりなくお元気でしょうか。7月に入り、ますます暑くなってきましたね。
 先月になりますが、出光美術館「水墨の風 長谷川等伯と雪舟」サントリー美術館「神の宝の玉手箱」(いずれも7月17日まで)に行きました。初めて両館をはしごしたのですが、地下鉄で数駅と、実はとても近かったんですね。いずれもランチに適当なお店が隣接しており、どちらを先に行こうか迷ってしまいました(今回は自宅からの距離で出光を先にしました)。写真は出光の無料飲料コーナーから皇居方面を写したものです。ここで一服して次に向かったのですが、ソファーが素敵すぎて立ち上がるのをちょっと躊躇してしまいました。出光には茶室もあり、季節ごとに違う道具が飾られていますので、こちらもお忘れなく。
出光美術館
 出光の「水墨の風」は、日本における中国絵画受容が実作品で辿れるという充実した内容。展示の目玉は雪舟、等伯ですが、日本美術史における漢画のスタンダードな流れを実物で追えるため、水墨画に関心はあるけれどとっつきにくい、と感じている方に特におすすめします。
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/
ただし、「スタンダードな流れ」を一応理解していることが前提となっているため、日本美術史の基本的な流れが頭に入ってないと、やや難しく感じてしまうかもしれません。
その意味では全くの初学者向けというよりは、やや中級者向けかもしれませんが、ひととおり通史を学んだ人にとっては、切れ切れの知識を「漢画の受容」という切り口で大きく捉え直すことが出来る良い機会となるでしょう。
もちろん出光所蔵の名品も多数出ていますし、解説も丁寧に付されていますので、少々難解なことがあっても、作品そのものを楽しむことは出来ます。もし作品データに「墨画淡彩」とあれば、水墨に薄く彩色が施されていますので、じっくり目を凝らしてみてください。間近に接すれば、印刷では見づらい微妙な色調、墨の擦れやにじみといった、水墨ならではの良さを感じて欲しいと思います。「食わず嫌い」を払拭すれば、その先に豊かな世界が広がるでしょう。
サントリー美術館
続くサントリー「神の宝の玉手箱」は、蒔絵手箱の名品が揃い踏みの大変贅沢なものです。また、私の好きな鎌倉時代の出雲大社蔵《秋野鹿蒔絵手箱》では小さな発見もありました。
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2017_3/
本展覧会のねらいは、サントリー所蔵の国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》の修復披露とあわせ、近世以前の来歴がはっきりしない《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》をどう位置づけるかにあります。本作品は江戸時代には下総古河藩の土井家に所蔵され、その後大正時代に横浜の実業家原三溪の手に移り、戦後サントリーの所蔵となり今に至っています。
展覧会ではまず《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》を含む蒔絵手箱の名品を陳列して導入とし、続いて絵巻の画中画などによる「蒔絵手箱」のイメージ、「浮線綾」の模様の由来を探り、最後の章では神社に奉納する神の箱の系譜と、なかなか壮大な構成で、神像など蒔絵箱以外の作品も充実していました。
《秋野鹿蒔絵手箱》の模造では個人的な発見があり、元の作品では薄れてしまっている蓋の鹿模様が明確に復元されており、これまで本作品に抱いていたイメージが一新されました。本展覧会では模造作品も「トピック展示 名品手箱の模造と修理」としていくつか出品されていましたが、このような模造は、当時の姿を我々に見せてくれる点に大きな意義があります。
また、ウィーン万博で帰国直前に座礁し、一年後に発見された蒔絵箱が無傷だったことで話題になった蒔絵料紙箱の展示も、漆の堅牢さを示すエピソードとして面白かったですね。漆芸の技法解説や修理過程もわかりやすく提示されていますので、漆の技法がわかりにくいと感じている人にもお勧めします。蒔絵箱の名品展としてだけでなく、見所の多い展覧会でした。


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