拈華微笑 2021 (3):近況報告
皆さん、こんにちは。新学期も始まりましたが、いかがお過ごしでしょうか。外苑キャンパス周辺も新緑のまぶしい季節を迎えています。写真は4月後半の外苑東通り沿いのゆりの木の並木道です。とても良いお天気で、つつじやハナミズキの花も見ごろでした。
私はと言えば、少し前に学会発表した内容を、目下論文にまとめています。締め切りが近いため、毎日パソコンと資料に向かっています。もっと前にまとめておくべきだったのですが、色々なことが重なり、この時期になってしまいました。ちょうどレポートや卒業研究に取り組む皆さんと似たような状況ですので、参考になりそうなことをいくつか書いてみたいと思います。
まず、論文は最新の研究成果を反映するものであり、時間がたつと、その間に新しい研究が進むため、自分の研究内容とあわせて、そうした研究も網羅しなくてはなりません。したがって、今回の私のように、出すのが遅くなればなるほど、作業は増えていくことになります。皆さんも研究内容を発表する場合は、できるだけ早くすることをお勧めします。
私が今書いている論文は、大正末期から戦後まで活躍した陶芸家である河井寛次郎の最初期の活動という、ごく短期間におけるある事実の究明です。しかし、その時期の解明のためには、これまでの研究史はもちろん、河井の陶業の全体像を頭に入れておかなくてはなりません。みなさんが論文研究を始めるとき、最初にやるべきこととして、作品リスト、年譜などを作成する、つまり先行研究をまとめるわけですが、それは、自分の研究の全体像を俯瞰的に眺めることが、その先の研究にとても大切だからです。これは一日や二日で出来ることではありませんので、時間を見つけて少しずつ進めることが肝要です。
最後に、皆さんも同様かもしれませんが、今一番困るのが、図書館の利用制限のため欲しい資料がすぐ手に入らないことです。そんな中、頼りになるのが国立国会図書館と近所の公共図書館です。国会図書館は利用制限がかかっているため、思い立ってすぐ行けるというわけにはいきませんが、事前に予約をして抽選に当たれば利用することができます。実際に手続きをして行ってみると、入館制限のため資料の受け出しやコピーも以前ほど混まず、思いのほか快適でした。デジタル資料の複写はパソコン画面で操作するなど、昔に比べればかなり使いやすくなっていますし、全体として、研究者の強い味方だと感じました。遠方に住む方には、遠隔複写というサービスも活用できます。時間は少々かかりますが、確実に資料を入手したい場合はこちらも便利です。
また、公立図書館も、京都の大学から離れて暮らす私たちにとっては大変有効です。例えば、他大の図書館の資料を閲覧したいとき、本学の図書館を通じた遠隔複写サービスでも資料のコピーを手に入れることが出来ますが、著作権の関係で一部しか複写できない場合は、館内閲覧するしかありません。そんなときは、お住いの近くの公立図書館を通じて資料請求すると、資料を手に取って読むことができます。資料の送料は実費でかかりますが、絶版などで手に入らない資料の入手にはとても便利です。
コロナ禍で、これまで当たり前だと思っていたことのありがたさに気付くことがしばしばですが、図書館利用に際しても全く同様です。様々な行動が制限されている中でもなんとか研究が続けられることに感謝しつつ、机に向かっています。在宅時間が多い今は、少し時間のかかる科目に思い切って取り組む好機かもしれません。皆さんもどうかお体に気をつけて学習を進めてくださいね。