【芸術学コース】特別講義のお知らせ
爆心地・長崎の彫刻–被爆聖人像、平和祈念像、母子像
長崎市の爆心地一帯に現存する彫刻群からもうひとつの日本近代彫刻史を捉えようとすること、これが本講義のテーマです。長崎は江戸時代に西洋彫刻の石膏像が輸入された場所であり、戦後には平和公園に《平和祈念像》などの大型彫刻が複数置かれるなど、彫刻と深い関わりを持っています。私はこれまで、戦後日本の彫刻にとって長崎はもっとも重要な場所と位置づけられるのではないか、長崎の彫刻群には人間にとって彫刻とは何かという問いの手がかりがあるのではないかと考え、作品制作と調査研究に取り組んできました。本講義では、そういった少し大きな問いについても、皆さんとともに考える機会になればと思っています。現在、長崎市松山町の爆心地一帯は平和公園となっています。長崎の平和のシンボルでもある北村西望作《平和祈念像》はここに1955年に設置されました。《平和祈念像》のまわりには世界各国から贈られた平和の像が並びます。そして1997年には、北村西望の助手でもあった富永直樹作《母子像》が設置されました。いっぽう、平和公園からほど近い浦上天主堂には、原爆の炸裂によって頭部を失った立像と、反対に首だけになったたくさんの聖人像が保存されています。このような異なる来歴を持つ彫刻であふれた爆心地・長崎は、いったい何を示しているのでしょうか。1980年代後半から90年代にかけて構想されるも実現することはなかった「平和公園再整備計画」や、90年代後半から2000年代前半まで続いた「母子像裁判」などの、これまで十分に光が当たることがなかった資料と併せて検討します。
北村西望《平和祈念像》(1955年) [撮影:小田原のどか]
講師:小田原のどか
演題:「爆心地・長崎の彫刻–被爆聖人像、平和祈念像、母子像」について
日時:2019年2月2日(土)14:00~16:00
会場:京都造形芸術大学 東京外苑キャンパス
教室は当日の掲示にてご確認ください。
※事前申込不要。参加無料。芸術学コース以外の方・一般の方どなたでもご参加いただけます。