比企貴之(教員) 伊勢神宮では、20年に一度、正殿はじめ諸殿舎を新たに造替するとともに、殿内に奉納される装束・神宝などにいたるまでを調進し、新宮に神霊を遷す一大事業がおこなわれる。これを式年遷宮と称す(「式」はさだめの意。「式年」で定めの年の意)。初めて催行されたのは、内宮が持統天皇4年(690)・外宮がその翌々年というから、いまから1,300年余りも昔のことである。以来、先頃2013年(平成25)の催行まで、中世の室町時代に120年ほどの途絶はあったものの、62回を数えている。
熊倉一紗(教員)
みなさんは、ふだん、レポートの準備や授業の予習・復習のため、もしくは小説などを読むため、本を手に取ることは多いと思います。その場合、たいてい「中身」を読むことに集中し、本そのもののデザインに注目することは、あまりないでしょう。しかし、1冊の本には、私たちの感覚を刺激する魅力がたくさん詰まっています。そのことをあらためて思い起こさせてくれたのが、京都dddギャラリーで開催の「平野甲賀と晶文社展」(会期:9月14日〜10月24日)でした。
京都dddギャラリーは、グラフィックデザインを中心に展覧会を企画・展示している数少ない施設(観覧料は無料!)で、大日本印刷株式会社(DNP)が運営しています。この京都dddギャラリーで先日まで開催していたのが「平野甲賀と晶文社展」でした。平野甲賀という名前は知らなくても、カッサンドルのポスターがあしらわれた沢木耕太郎『深夜特急』の装丁家といえばわかる、という方もいらっしゃるかもしれません。
梅原 賢一郎(教員) 道元の『正法眼蔵』は難解な仏教書の定番とされている。しかし、どの点で難解であるのか、じゅうぶんに吟味もされずに、イメージが先行している感がないわけではない。難解さは、境地の深さにあるのか、論理性に問題があるのか、文字の法外な配置にあるのか、などと、丁寧に検討していくと、案外、読めていけるのではないかと、わたしは思っている。そして、そうして読みすすめていくと、『正法眼蔵』は、たんに宗教書というにとどまらず、なんと含蓄のある、おもしろい書物だとも思うのである。 たとえば、わたしは、次の文を読んだとき、思わず、クスッと笑ってしまった。
池野絢子(教員)
ドイツのハノーファー出身のダダイスト、クルト・シュヴィッタース(1887-1948)。その彼がライフワークとした作品「メルツバウ(メルツ建築)」は、廃物やがらくたのアッサンブラージュ、および白い板と石膏の幾何学的立体からなる、複合的構築物である。1923年、シュヴィッタースはハノーファーにあったアトリエ兼住居でその制作を始め、三上美和(教員) 皆さん、こんにちは。ものすごく久し振りの更新ですが、お変わりなくお元気でしょうか。7月に入り、ますます暑くなってきましたね。 先月になりますが、出光美術館「水墨の風 長谷川等伯と雪舟」サントリー美術館「神の宝の玉手箱」(いずれも7月17日まで)に行きました。
田島恵美子(教員) ヴァチカンといえば、言わずと知れたカトリック教会の総本山であり、数々の美術品でも有名ですが、装飾写本をはじめ歴史、法律、哲学、科学および神学に関する貴重な文献や古文書、印刷本など100万冊以上の歴史的図書※1を所蔵する世界有数の図書館も有しています。 その貴重な蔵書を展示した「ヴァチカン教皇庁図書館展Ⅱ―書物がひらくルネサンス」が、今年4月末~7月半ばにかけて印刷博物館にて開催されました。写本から印刷本への変遷を紹介した2002年の第1回※2に続くこの企画展では、〈書物〉と〈ルネサンス〉をキーワードに、中世写本、初期刊本、地図や書簡類などヴァチカンが所蔵する21点と、国内の諸機関が所蔵する書物を加えた計69点が展示されていました。
池野絢子(教員)
ウンベルト・エーコ(Umberto Eco, 1932-)をご存知でしょうか。彼の名前は、『薔薇の名前』(1980)や『フーコーの振り子』(1988)を著した小説家としてより知られているかもしれません。しかし、エーコは、小説家であると同時に、メディア論者、記号学者、そして美学者でもあります。ここでは、そのエーコの著作の一つ、現代芸術の理論書として今なお広く参照されている『開かれた作品〔Opera aperta〕』(1962)(ⅰ)と、それにまつわる論争をご紹介したいと思います。
三上美和(教員)
はじめに 富本憲吉(1886-1963)は日本近代を代表する陶芸家の一人であり、色絵磁器の技法で重要無形文化財保持者にも認定され、生前から高い評価を受けた。特に戦後京都で制作された金銀彩の連続模様の作品は、その到達点と評されている。回顧展もたびたび行われ、近年はジャンルにとらわれない多様な工芸制作を行った初期の活動についても再評価が進んでいる。
熊倉一紗(芸術学コース教員)
今年は秋から冬にかけて京都で2つのポスターの展覧会がありました。1つは京都工芸繊維大学美術工芸資料館にて開催の「サントリーポスターコレクションに見るベルエポックのポスター」(2014年12月26日まで)で、もう1つは、太秦に移転したdddギャラリーにて開催の「THE NIPPON POSTERS」(2014年12月20日まで)です。今回は、地域や時代が異なるこの2つのポスターの展覧会の特徴などを紹介したいと思います。
金子典正(芸術学コース教員)
仏教美術といえば、まずは仏教発祥の地であるインド各地の遺跡や、あるいは仏教が東漸して敦煌莫高窟などの石窟が数多く造営された中国の仏教美術が広く知られていますが、実はスリランカの各地には世界遺産に登録されている様々な時代の寺院や遺跡、数多くの仏像が伝えられています。今回はスリランカの仏教美術についてご紹介します。