小林留美(教員) 今、日本で流通しているヴィジュアルイメージの中で、漫画の占める割合がどれくらいになるのか見当もつきません。どなたでも、大好きな漫画・思い出に残る漫画を複数挙げることができるでしょう。このような場で 「漫画? 」と言われそうですが、少しお話を。
田島恵美子(教員) ヴァチカンといえば、言わずと知れたカトリック教会の総本山であり、数々の美術品でも有名ですが、装飾写本をはじめ歴史、法律、哲学、科学および神学に関する貴重な文献や古文書、印刷本など100万冊以上の歴史的図書※1を所蔵する世界有数の図書館も有しています。 その貴重な蔵書を展示した「ヴァチカン教皇庁図書館展Ⅱ―書物がひらくルネサンス」が、今年4月末~7月半ばにかけて印刷博物館にて開催されました。写本から印刷本への変遷を紹介した2002年の第1回※2に続くこの企画展では、〈書物〉と〈ルネサンス〉をキーワードに、中世写本、初期刊本、地図や書簡類などヴァチカンが所蔵する21点と、国内の諸機関が所蔵する書物を加えた計69点が展示されていました。
金子典正(教員)
お元気ですか? まだまだきびしい残暑が続きますね。体調にはくれぐれも気をつけてください。 さて、今回の私の拈華微笑は、毎年『雲母』9・10月合併号に掲載している「考え続けること」です。この記事はスクーリング以外でなかなか皆さんとお会いできない私からのメッセージです。
池野絢子(教員)
ウンベルト・エーコ(Umberto Eco, 1932-)をご存知でしょうか。彼の名前は、『薔薇の名前』(1980)や『フーコーの振り子』(1988)を著した小説家としてより知られているかもしれません。しかし、エーコは、小説家であると同時に、メディア論者、記号学者、そして美学者でもあります。ここでは、そのエーコの著作の一つ、現代芸術の理論書として今なお広く参照されている『開かれた作品〔Opera aperta〕』(1962)(ⅰ)と、それにまつわる論争をご紹介したいと思います。
田島恵美子(教員)
「ニセモノ」と聞くと、なんとなく、劣ったもの、残念なものといったイメージをもってしまうのではないでしょうか。ひとつには、「素晴らしいホンモノ」に対する「劣ったニセモノ」という見方を無意識のうちに前提としていることがあるでしょう。確かに、その存在は「ホンモノ」との関係性において成り立ちますが、それは単なる二項対立的な捉え方だけでは説明できない複雑さを孕んでいます。
三上美和(教員)
はじめに 富本憲吉(1886-1963)は日本近代を代表する陶芸家の一人であり、色絵磁器の技法で重要無形文化財保持者にも認定され、生前から高い評価を受けた。特に戦後京都で制作された金銀彩の連続模様の作品は、その到達点と評されている。回顧展もたびたび行われ、近年はジャンルにとらわれない多様な工芸制作を行った初期の活動についても再評価が進んでいる。
池野絢子(教員)
三月、イタリアへの調査旅行で、北イタリアはロンバルディア州にある都市ヴァレーゼを訪問しました。ミラノから鈍行で約一時間、コモ湖の西側に位置する街です。ヴァレーゼといえば、エステ家の宮殿と庭園で有名ですが、今回の私の旅の目的は、街の中心部を見下ろす小高い丘の上にある一軒の瀟洒な邸宅、パンツァ荘でした。 その名を冠されたジュゼッペ・パンツァ・ディ・ビウモ(1923-2010)という人物をご存知の方は、ほとんどいないでしょう。彼は、イタリアでは有数の現代美術のコレクターであった人物で、とくにアメリカの抽象表現主義とミニマル・アートの膨大なコレクションを有していました。私は去年から、この人物に関心を持って調査を続けています。なぜか? というと、彼の現代美術に対するこだわりがとても独特だったから。パンツァは、作品の収集に情熱を傾けただけではなく、作品を「どこに、どのように置くのか」が重要な問題であると考えた、稀有なコレクターだったのです。その結果パンツァは、抽象的で幾何学的なアメリカの現代美術を、歴史あるヨーロッパ貴族の邸宅に展示することになります。
言葉を転がし、言葉を鍛え、言葉を磨く
梅原賢一郎(教員)
仏教書として難解とされている書物に、道元の『正法眼蔵』がある。読んで難しいばかりではない。編集のされ方によって75巻本や95巻本とされているが(ほんとうは100巻にしたかったのだともいわれている)、難解なうえに長大で、これを読みこなすに易しいといえば、だれからも不信の目を向けられるのがおちであろう。どうも、道元は、どこまでも厳格で禁欲的で、近寄りがたいというのがたいていのところである。
しかし、テキストを読むかぎり、ユーモラスな一面が伝わってくる。道元は、曲芸師さながらに、言葉を転がし、自由自在に操る。そこに、天性の遊び心さえ嗅ぎつけることができる。まずは、マジシャンぶりをご覧あれ。
加藤志織(教員)
2014年度の授業が間もなく終了します。日々の課題から開放され時間的にも精神的にも余裕がある時期です。そこで今回は本をお奨めしようと思います。あまりにも難しい内容の書籍は楽に読めませんし、堅苦しい内容でも気分転換につながりませんので今回は漫画を紹介します。 とは言え芸術にかんする知見が得られるように細野不二彦の『ギャラリーフェイク』(全32巻)を選びました。アニメ化もされたので、ご存知の方も多いことと思います。しかし1992年に第一話が週刊『ビッグコミックスピリッツ』誌上に発表され、2005年に長期連載が終了して以来、すでに十年近い時間が経過しているので、一度もこの漫画のタイトルを耳にしたことがない方もいらっしゃることでしょう。