あの秘仏が展覧会へ:仁和寺の北院薬師さま

カテゴリー: 未分類 |投稿日: 2017年9月18日

金子典正(教員)
 毎年10月上旬になると学科共通科目「文化芸術遺産フィールドワーク2」で京都市北西部の古刹として名高い仁和寺、法金剛院、高雄の神護寺、栂尾の高山寺を訪れています。


 丸一日教室で講義をした後、翌日に実際に各寺院を訪れて、大切に守り伝えられているご本尊、国宝や重要文化財に指定されている数多くの寺宝、古建築、庭園などを学生の皆さんと一緒に見学できることは、私にとっても貴重な時間であり、毎年大きな楽しみです。それと、受講された方はご存知の通り、ご一緒する栗本徳子先生のお話しもとても勉強になりますよね。とっても充実した学外研修の授業です。
 さて、そうした授業で毎年お参りしているにもかかわらず、秘仏のために拝観が叶わない秘仏中の秘仏があります。それは仁和寺の霊明殿に祀られる薬師如来坐像です。

 本像は、かつて同寺の北院に安置されていたことから、北院薬師とも呼ばれます。像高が僅か10.7cmの小さな薬師如来坐像で、台座と光背をあわせた総高でも約24cmという小さな仏像なのですが、実はこれがすごいお薬師さんなのです。薬師像、台座、光背すべて白檀製で、像の表面にはミリ単位の大変細かい切金文様がビッシリと施されています。これが実に素晴らしい。そして、本像はあの空海が唐から持ち帰ったという伝承があるのです。さらに、本像は平安後期の康和五年(1103)正月八日に北院が罹災した際、誠に残念ながらに焼失し、腰から下と台座のみが焼け残るという災難に見舞われます。しかし、やはり空海ゆかりの薬師像ですから、仁和寺では当時の京都の造仏界の中心的存在であった仏師法印円勢に依頼し、その円勢と弟子の長円が、約一カ月間、仁和寺に通いつめて完成させたという記録が残っています。つまり、「法印」という最高位の肩書をもつ超一流の仏師が弟子とともに一カ月かけて制作した仏像です。ですから、そりゃもう「すごい!」の一言に尽きます。細部にわたる緻密な彫り、精緻で美しい切金も、手がけた仏師がそれほどの技をもっていたからこそ、成せることが出来たのです。と、例年授業でこんな風に説明していますが、残念ながら本像は秘仏ですので拝観が叶いません。
 ところがっ!なんと!大変有難いことに、今秋の京都国立博物館「開館120周年記念 特別展覧会 国宝」と来年年明けの東京国立博物館「特別展 仁和寺と御室派のみほとけ」に特別出陳されることになりました!これは本当にすごいことです!みなさん、是非、実際に薬師如来坐像の素晴らしさを実見して欲しいと思います。その際、お持ちの方は単眼鏡(あるいは近距離双眼鏡)を使用されると細かい彫りまでしっかり観察することができるでしょう。このほか、仁和寺展では葛井寺の秘仏千手観音像も特別出陳されます。スクーリングで東京、京都を訪れるようでしたら、必見の展覧会です!そうそう、それと運慶展もお忘れなく!
京都国立博物館「開館120周年記念 特別展覧会 国宝」
東京国立博物館「特別展 仁和寺と御室派のみほとけ」 
東京国立博物館「興福寺中金堂再建記念特別展 運慶」
 


* コメントは受け付けていません。