梅原賢一郎(芸術学コース教員)
以前、書斎は家の片隅にあった。そこへは階段をあがり廊下をわたりようやくたどりつくことができた。切りとられた窓からは遠くに京都の夜景が見えた。わたしは、家のなかにあっても、宙に浮いた実験室のようなところで、比較的若い勉学の年月を過ごした。
濱村繭衣子(芸術教養コース教員)
(…今回は、芸術教養学科の濱村繭衣子先生が、御専門の江戸絵画の展覧会を中心に御紹介くださいました。今春の江戸期の展覧会の充実ぶりに、改めて驚かされます。先生ならではのディープな内容をお楽しみください。)
みなさん、こんにちは。濱村です。 ゴールデンウィークに向けて展覧会巡りを計画している方もおられることでしょう。みなさんの中にはテキスト科目の「日本美術史」を勉強されている方もいらっしゃると思います。今回はなかでも最近話題になっている江戸時代の展覧会を中心にお届けしましょう。
水野千依(芸術学コース教授)
地中海世界に棲息する動物について書くというお題をかつて与えられたことがある。そのとき、私が選んだのは、蛙。かならずしも地中海文化を代表する動物とはいえないとしても、蛙は古来、奇跡的治癒力や抗毒力が見込まれ、固有の伝説を生み出してきた興味深い存在である。
そのことを示すのが、数々の護符である。イタリアのアブルッツォ州、ウンブリア州南部、マルケ州では、魔術(兇眼、妖術、呪いなど)から身を守るために、蛙をかたどった銀の護符を身に着ける習慣が古くから存在した。異教的呪術性を帯びたこうした護符は、キリスト教に容認されはしなかったものの、実際には広大な普及をみた。
今年も下記の日程で芸術学コース主催の公開講座を開催いたします。今回の講座では水野千依教員をファシリテーターとし、イタリア服飾史と色彩象徴論がご専門の伊藤亜紀先生をお招きし、以下のテーマでお話しいただきます。受講料は無料、事前申込みも不要ですので、みなさん、奮ってご参加ください。芸術学コース以外の方、一般の方、どなたでも聴講可能です。
「イタリア・モードは死なず」
伊藤亜紀先生(特別講師:国際基督教大学教養学部教授)
- 日時:2014年5月18日(日)15:00~17:00(開場14:30)
- 開場:京都造形芸術大学(東京・外苑キャンパス)
- 入場料無料/事前予約不要
…詳しくは、こちらのPDFをご参照ください【PDFファイル】。
水野千依(芸術学コース教員)
漆黒の背景に優美に佇む聖母子。今春、東京の駅構内や車内で、その姿を目にした人は多いだろう。国立西洋美術館で開催されている『ラファエロ展』の顔となる《大公の聖母》だ。左腕にイエスを抱く立像は、東方正教会が「神の母(テオトコス)」の表現として確立した聖母類型のひとつ「ホデゲトリア型」に倣っている。しかしラファエロの作品では、金地や厳格な正面観などビザンティン美術に特有の超越的な聖性を顕示する要素は抑制され、幼子は溌剌とした視線を画面の外に注ぎ、聖母は目を伏し静謐な微笑みを浮かべている。
金子典正(芸術学コース教員)
あと1ヶ月もすれば秋も深まり、今年もまた美しい紅葉の季節がやってきます。スクーリングなどで瓜生山キャンパスを訪れ、足をのばして楽しむ方も多いと思います。大学付近では曼殊院、真如堂、下鴨神社などが綺麗ですね。東山では永観堂、南禅寺、清水寺などが定番です。そして全国的に有名な場所といえばやはり通天橋の紅葉で名高い東福寺があげられます。
金子典正(芸術学コース教員)
今回の私の拈華微笑は、昨年の同時期に掲載した文章をそのまま引用します。これはスクーリング以外でなかなか皆さんとお会いできない私からのメッセージです。今年の3月、卒業式後の「卒業生を送る会」の席上で、みなさんの先輩からも「共感した」というお声をいただきました。参考にしていただければ幸いです。
三上美和(芸術学コース教員)
連休も終わり、新緑のまぶしい季節です。四季折々の花を眺めるのは楽しいものですが、花をテーマに作品を描いている画家にとって、天候、気温の具合でスケッチ旅行の日程が左右されるため、楽しいどころではありません。一度見逃すと次にスケッチできるのは一年後だから、天気予報とカレンダーをにらむ毎日。これは、先日お会いした日本画家の話です。この時印象に残ったエピソードを紹介します。
熊倉一紗(芸術学コース教員)
今回の拈華微笑は、デザインにまつわる書籍の紹介をしたいと思います。今年の9月20日に大きな話題とともに発売されたiPhone 5cをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。5色からなる目にも鮮やかな色彩は、スマートフォンに興味がない方でもCMなどで見かけたことがあるのではないでしょうか。AppleのWebサイトでは次のようなコピーが訴えかけます。「この色は、あなたです。色は単なる色ではありません。それは、自分の感情を表すもの。考えを示すもの。こだわりを見せるもの。あなたの個性を伝えるもの。」5つの色はそのための色だというわけです。
加藤志織(芸術学コース教員)
上(タイトル)の一文はイタリア・ルネサンス美術を専門に研究する美術史家ブルース・コールが著書『ルネサンスの芸術家工房』(ぺりかん社)において語っている言葉です。この書籍は、社会における芸術家の位置づけ、制作技法、美術作品の需要などについて、実証主義的にわかりやすく論じた良書です。