『雲母(きらら)』は本学通信教育部の補助教材です。その記事の一部を転載して紹介しています。

…『雲母』では、シラバス訂正、スクーリングや講演会など、学生の皆さんにとって大切な情報や、教員の近況についてお知らせしています。皆さんの御自宅にも送られていますが、ウェブサテライトの「京都芸術大学通信教育部サイバーキャンパス|デジタルキララ」(要ID・パスワード)で閲覧できますので、一度は目を通しておきましょう。
…また『雲母』では「今月の一冊」や「拈華微笑」など共通のテーマを毎年度設け、リレー連載を行っています。教員たちがそれぞれの専門から興味深い記事を寄せています。ぜひ皆さんの学習の一助としてください。なお、「過去サイトの記事」も大いに参考になりますので、あわせてご活用ください。

杉﨑貴英(芸術学コース教員)

 宇治平等院の鳳凰堂といえば、“平安貴族の浄土への憧れを今に伝える国宝建築” として、安置される阿弥陀如来像や雲中供養菩薩像とともにあまりにも有名です。そんな鳳凰堂についてのわかりやすいガイダンス・ブックかな…とも受け取れそうなタイトルですが、実は通説的な理解をトータルにとらえなおす、知的挑戦の書なのです。

三上美和(芸術学コース教員)

 長谷川潔(1891 ~ 1980)はフランスで活躍した銅板画の巨匠です。今春開催予定だった「プーシキン美術館展」の中止で急遽「長谷川潔展」が開催されたためご覧になった方もいるかもしれません。

 本書ではこれまで銅板画の前段階とみなされがちだった初期の挿絵作品を詳しく論じた上巻、銅板画家として飛躍した時期の中巻、晩年の深淵な世界に至る下巻までを豊富な文献を駆使して論じられています。

田島達也(芸術学コース非常勤講師)

 今回は、8 月27 日(金)~ 29 日(日)の3 日間、スクーリング「日本美術史2a」を担当される田島達也先生に、今月の一冊の紹介をお願いしました。

 私が専門としているのは日本美術史です。作品に即して真贋、年代、描かれている内容の研究などを行っています。なので、お宝鑑定みたいなものですと説明することもあります。しかし、実際にはテレビのようにものごとを断定的に述べるのは難しいものです。その一例として、最近出た古田亮著『俵屋宗達』を紹介しましょう。

柱本元彦(芸術学コース教員)

 これから「卒業研究」レポート1にとりかかる皆さんに一冊紹介します。樋口裕一著『ホンモノの文章力』(集英社新書)。アヤシゲなタイトルですが、書き方の実践(要するに一人ディベート)をこれほど単純明快に示した論文作文指南書は、わたしの知るかぎり他にありません。まずは開口一番、<文は人なり、自分の言葉で、ありのままに書け>といった科白の欺瞞を撃破して、筆無精を励ましてくれます。

前木由紀(芸術学コース教員)

 醜。醜いこと。醜さ。醜さを物語ること。どんなふうにして? この本でウンベルト・エーコは西洋文化における醜さをめぐる言説をおおよその時系列に沿って取り上げる。中世における「受難・死・殉教」、ルネサンス期の「怪物と予兆」、19 世紀の「不気味な者」などの側面を切り取りながら、それらをテクストの蒐集と分析によって解説してゆく。それは西洋史における醜さの「大全( スンマ)」である。(エーコがトマス・アクィナス研究から出発していることと、この著述のスタイルとの関連を勘ぐらずにはおられない)。

三上美和(芸術学コース教員)

 美術史研究において、パトロン(保護者、後援者)や注文主を含めた受容者を視野に入れた考察は、近年様々な形でなされてきています。私もそうした観点から近代の日本画と工芸について研究しています。 もっとも、パトロンが美術の成立に重要な役割を演じてきたことは言うまでもありませんが、あくまで美術を取り巻く多様な要素の一つであり、美術史研究の中心にはなりえないかもしれません。しかし、今日の美術史はあまりに作品に集中しすぎており、より豊かな作品理解へと結びつくためにも、作品の背後にもっと目を向けるべきでは、という認識から編まれたのが本書です。

金子典正(芸術学コース教員)

 「少年老い易く、学成り難し」という中国古代の漢文を日本語に読み下すことは一体いつ頃から始まったのでしょうか? その答えを教えてくれる一冊が今回ご紹介する大島正二氏の『漢字伝来』(岩波新書1031)です。大島氏は漢文などの中国語学を長年研究された方で、漢字が中国から伝来して日本語化した歴史を丁寧に解説してくれます。本書の内容は漢字が1世紀頃に日本に伝来したとされる福岡県志賀島出土の有名な金印の話から始まります。

米倉立子(芸術学コース教員)

 本書は、「近代美術のゆくえ」という近代以降の日本美術史を扱うシリーズの一冊ですから、本来ならば私がここ研究室だよりで特に紹介するにはふさわしくないかもしれません。しかし、美術あるいは美術史という概念や、モノをコレクションする美術館の確立の過程などの多様な切り口から論じられていて、日本美術を学ぼうとする方のみならず、受講者の皆さんそれぞれの関心に何かしら応えてくれるのではと思います。今まで断片的に知っていたり、感じていたりしたことが相互に繋がって改めて腑に落ちる箇所が多々あり、そこから新たな知見や関心へと繋がる楽しみどころの多い一冊でしょう。

小川佳世子(芸術学コース教員)

 昨年は「源氏物語千年紀」でしたが、本年2009年は「世阿弥発見百年」の年にあたります。と、いっても世阿弥が『源氏物語』より10分の1も現在に近い人である、というわけではありません。能楽を大成した世阿弥が『風姿花伝』をはじめとする数々の能の伝書を書いたのは室町時代、今から600年ほど前のことです。しかしそれらの伝書は書かれてからずっと、世間一般には知られることなく、能楽の家に相伝されてきました。

熊倉一紗(芸術学コース教員)

 早いもので、あとひと月もすれば年末。年末といえば、近年日本郵政の年賀状キャンペーンをしばし目にするが、その広告費は、民営化以前よりも格段に多いといわれている。確かに、前身の日本郵政公社は国営企業であり、民間企業のような派手な宣伝活動が行われてこなかったのも頷ける。しかしながら、今から辿ることおよそ80 年前の戦間期の英国では、国の省庁である逓信省(郵便事業と電信電話事業を管轄していた省庁)によって民間顔負けの宣伝活動が行われていた。